Daldinia sp. no.1

Daldinia sp. no.1

Daldinia sp. no.1.
チャコブタケ属菌。10月8日撮影。

[特徴]
子実体は頭の丸い棍棒状、頭部はほぼ球形で直径 5-8 mm.、表面は平滑でやや粉状、茶さび色(古くなると黒褐色)、子嚢殻の孔口がまばらな黒点状に見えるが突出しない。 柄は円筒形、基部に向かってやや細まり、直径 2-4 mm.、高さ 4-8 mm. 程度。表面は頭部と同色で平滑あるいは時に不完全なリング状の紋が僅かに見られる。 子実体の表面は硬い炭質、内部は充実し黒褐色でサクサクした感じの硬いコルク質、柄の部分も含めて幅 1 mm. 程の同心円状の環紋がある。 5% KOH 水溶液で顕著な色素を溶出しない。頭部表面下に子嚢殻が一層に並ぶ。-- 子嚢殻は長卵形からやや倒円錐形、480-510 × 1000-1200 μm. 程度。-- 子嚢は長円筒形、下半は細く伸びて柄状になり8胞子をほぼ一列に生じる。先端リングはメルツァー液で青変し、二つの平たい点状に見える。6.0-7.4 × 140-240 μm. -- 側糸は多数、無色で鞭状、隔壁がある。基部付近で径 10 μm. 程度。-- 子嚢胞子は左右不対称の紡錘形、黒褐色、平滑。両端はやや丸く、膨らんだ側にほぼ全長に亘る直線状の発芽スリットがある。5.7-6.3 × 11.4-15.5 μm.

[コメント]
広葉樹と思われる落枝に生じていたもの。子座内部が同心円状の環紋があるので Daldinia 属には間違いないだろう。 日本の文献にはチャコブタケ以外の Daldinia 属菌としてツボミタケが比較的良く取り上げられているが、この菌は成熟後内部が空洞化するといわれ、 その他の特徴も少し異なる。Ju, Rogers and San Martin (1997) のモノグラフを調べてみると Daldinia cudonia に近い様だが、 Ju, Vasilyeva and Rogers (1999) によって極東ロシアで記録された Daldinia sp. from Russian Far East ではないかと思う。

[参考文献]
Ju, Rogers and San Martin (1997): A revision of the genus Daldinia. (Mycotaxon ; 56, p. 243-293).
Ju, Vasilyeva and Rogers (1999): Daldinia singularis sp. nov. from Eastern Russia and notes on some other taxa. (Mycotaxon ; 71, p. 405-412).

[初掲載日: 2011.11.29]