Discosia sp. no.1
Discosia sp. no.1
ディスコシア属菌。10月16日撮影。
[特徴]
落葉上に分生子殻が群生する。分生子殻は落葉の表側、クチクラ下に発達し、不正レンズ形ないし円盤状、径 0.3 mm. 程度まで。
上面はツヤがある黒色、中央に不明瞭な孔口があり、成熟すると小さく裂開状に開いて分生子を放出する。分生子形成細胞は分生子殻下面に生じ、分生子を単生し、分生子は一層に並ぶ。--
分生子はほとんど真直ぐあるいは僅かに湾曲する長ソーセージ形、薄壁、平滑、始めはほとんど無色、後に淡黄褐色になる。先端側は丸く、基部側は僅かに截頭状になる。
横に3隔壁があり4細胞、両端の細胞はやや短く、隔壁部は始めは括れないが、放出された分生子では僅かに括れる。中央の2細胞は殆んど同長または先端側がやや短い。
各細胞に1、2個の比較的大きな油球が目立ち、22.8-28.6 × 2.6-3.4 μm.。
両端の細胞の隔壁付近内側からそれぞれ1本の細糸状、直線的、長さ 9-12 μm. の付属糸を生じる。
[コメント]
ラカンマキ(Podocarpus macrophyllus v. maki、イヌマキの変種)の落葉に生じていた物。
針葉樹から記録のある Discosia 属菌の中では、分生子の中央2細胞の長さ、付属糸が隔壁の近くから生じる点など、Discosia strobilina Libert が近いと思うが、
若干分生子の大きさが異なる。(Matsushima (1975) では 18-25 × 2.7-3.6 μm.、Chlebicki (1995) では 13.3-17 × 2.3-2.7 μm.、Sylloge fungorum では 18-20 μm.)
同じく針葉樹生の D. virginiana Thüm. は、 Sylloge fungorum (v. 10, p. 427) には 15-28 × 2-3 μm. とあり、変異が大きい種かと思ったが、
Thümen の原記載 (Mycotheca universalis, cent. 20, no. 1985) には 15-18 × 2-3 μm. とあるから、誤記だろう。
澤田 (1950) はハイイヌガヤ (Cephalotaxus harringtonia v. nana) 葉上に黒色の分生子殻を生じる菌として
Amphichaeta cephalotaxi Sawada(澤田の命名はハイイヌガヤ葉漆黒点病菌。日本植物病名目録では葉黒点病)を記録している。
Amphichaeta 属は、現在は Seimatosporium 属の異名とされているが、この菌は小林ほか (1992) によれば Discosia 属の菌であると言う。
澤田の記載には分生子は 20-27 × 2.5-3 μm. とあり、ラカンマキ上の菌と近い値である。なお、Discosia 属は単系統ではないことが明らかになっている。
[参考文献]
Chlebicki (1995): Microfungi on Dryas extracted from Polish phanerogam herbaria. (Acta Societatis Botanicorum Poloniae ; 64(4), p. 393-407).
Matsushima (1975): Icones microfungorum a Matsushima lectorum.
Vanev (1991): Species conception and sections delimitation of genus Discosia. (Mycotaxon ; 41(2), p. 387-396).
Wołczańska et al. (2004): Survey of the genus Discosia (anamorphic fungi) in Poland. (Polish botanical journal ; 49(1), p. 55-61).
小林ほか (1992): 植物病原菌類図説.
澤田 (1950): 東北地方に於ける針葉樹の菌類 II. スギ以外の針葉樹の菌類. (林業試験場研究報告 ; 46, p. 111-150 + 4 plates).
[初掲載日: 2019.05.31] //
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