Ericboehmia sp. no.1

Ericboehmia sp. no.1

Ericboehmia sp. no.1
エリクボエミア属菌。4月18日撮影。

[特徴]
樹皮上にやや群生する。子嚢果は厚い二枚貝状、比較的硬い炭質、黒色、1.4 × 0.8 mm. まで、高さは 1 mm. までになる。 上部にほぼ長径全長に亘るスリット状の裂け目があるが、成熟しても開かない。外面には、裂け目と平行な溝条が少数ある。-- 子嚢は厚膜、円筒状、顕著な先端構造は見られず、頂孔は盲管状、メルツァー試薬に呈色しない。末端は急に細くなり短い尾状になる。8胞子をほぼ2列に生じる。 340-400 × 45-55 μm. -- 偽側糸は糸状、無色、曲がりくねり、径 1-2 μm.、ゼラチン様物質に被われる。-- 子嚢胞子は両端の丸い紡錘形、平滑、初め無色だが後に淡黄褐色になる。ほぼ中央に隔壁があり2細胞、隔壁部はわずかに括れる。 厚膜で、中央付近で厚さ 2.5-3 μm.、両端では厚くなる。内容物は泡状、後に不明瞭な横の隔壁が各細胞に1-5個生じる。 両端には無色の乳頭状の付属糸があるが、消失しやすい。射出直後には全体に薄い不明瞭な被膜が見られる。100-120 × 25.5-27.2 μm.

[コメント]
コナラと思われる立枯木の樹皮上に生じたもの。100 μm. を超える大型の子嚢胞子が目を惹く。Boehm et al. (2009) の検索表では Ostreichnion に辿り着く。 Gardiennet et al. (2019) は、子嚢胞子が石垣状の隔壁を持つものを Ostreichnion 属に残し、2細胞で後に二次隔壁を生じるものを新属 Ericboehmia に移していて、属の特徴は良く一致する。 子嚢胞子が 100 μm. を超える種が Gardiennet et al. (2019) の検索表には2種挙げられていて、 E. centramura (Senan.) Gardiennet, Lechat & J. Fournier は測定値は近いが異なるように思えるので Ericboehmia 属菌の一種としておく。

[参考文献]
Barr (1975): The genus Ostreichnion. (Mycotaxon ; 3(1), p. 81-88).
Boehm et al. (2009): A molecular phylogenetic reappraisal of the Hysteriaceae, Mytilinidiaceae and Gloniaceae (Pleosporomycetidae, Dothideomycetes) with keys to world species. (Studies in mycology ; 64, p. 49-83).
Gardiennet et al. (2019): Ericboehmia, a new genus segregated from Ostreichnion in the Hysteriaceae, with the new species E. saulensis. (Ascomycete.org ; 11(6), p. 171-176).
Tibpromma et al. (2017): Fungal diversity notes 491-602: taxonomic and phylogenetic contributions to fungal taxa. (Fungal diversity ; 83, p. 1-261, note 495).

[初掲載日: 2023.07.05] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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