Erioscyphella sinensis

Erioscyphella sinensis

Erioscyphella sinensis (Z.H. Yu & W.Y. Zhuang) Sasagawa, Tochihara & Hosoya
シイカシヒナノチャワンタケモドキ。4月17日撮影。

[特徴]
落葉の主に上面に散生ないしやや群生する。子嚢盤は椀形から平開し、さらにはやや凸型になり、径 1 mm. 以下。 子実層面は白色、縁は全縁、外面も白色でやや長い白色の毛に被われる。柄は細く、比較的長い。同様の毛に被われる。-- 子嚢は円筒形、先端は僅かに肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で青変するが、微小で、確認しづらい場合がある。基部にかぎ形構造は見られない。8胞子を束状に生じる。45-54 × 4.5-5.2 μm. -- 側糸は直線的太針状、無色、薄壁、基部に隔壁があり、最大径 2.2-2.6 μm.、先端は子実層より 5-10 μm. 程度突出する。 -- 子嚢胞子は糸状で射出されたものは緩やかな弓形、両端はやや細くなって尖る。無色、薄壁、平滑、隔壁は認められず、微小な油球状内容物がある。31-37 × 0.5-0.7 μm. -- 托組織の詳細を観察できなかったが、髄層は径 2-3 μm. の菌糸からなる絡み合い菌糸組織、外皮層は 20 × 5 μm. 程度までの矩形状の細胞からなり、共に無色。 毛状菌糸は最外層の細胞より生じ、無色、薄壁、少数の隔壁があり、表面全体が細かい顆粒状、先端はやや細まり、丸い。 顕著な内容物は見られないが、時に先端付近に無色泡状の内容物があり、また先端に不定形無色の付着物が見られることがある。57-70 × 2.5-3.5 μm.

[コメント]
照葉樹林内の落葉に発生していたもの。寄主はおそらくアラカシ (Quercus glauca)。春から初夏頃に見られる。子嚢盤は薄く、柄も細長くて全体に脆弱な感じがする。 Tochihara and Hosoya (2022) に拠ると、国内では主にシイ類(Castanopsis 属)から記録されているようである。 Yu and Zhuang (2002) の原記載では Lachnum mapirianum の変種 L. mapirianum var. sinense Z.H. Yu & W.Y. Zhuang として記載され、子嚢胞子は 21-35 × 0.5-0.8 μm. となっている。 一方、Su et al. (2023) の Erioscyphella 属各種の形態的特徴の比較表 (Table 3) では E. sinensis の子嚢胞子の大きさは 40-52 × 0.6-1 μm. 等とされている。 かなり異なるのが不審だったが、上記表中で E. sinensis のものとして示されている特徴や数値は、すべて Yu and Zhuang (2002) で示された L. mapirianum var. mapirianum(基準変種)のそれである。

[参考文献]
Su et al. (2023): Two new species of Erioscyphella (Lachnaceae) from southwestern China. (Current research in environmental & applied mycology (Journal of fungal biology) ; 13(1), p. 16-33).
Tochihara and Hosoya (2022): Examination of the generic concept and species boundaries of the genus Erioscyphella (Lachnaceae, Helotiales, Ascomycota) with the proposal of new species and new combinations based on the Japanese materials. (MycoKeys ; 87, p. 1-52).
Yu and Zhuang (2002): New taxa and new records of Lachnum and Arachnopeziza (Helotiales, Hyaloscyphaceae) from tropical China. (Nova Hedwigia ; 74(3-4), p. 415-428).

[初掲載日: 2023.12.05] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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