Erysiphe kusanoi
Erysiphe kusanoi (Syd.) Braun & Takamatsu = Uncinula kusanoi Syd.
エノキうどんこ病菌。11月7日撮影。
[特徴]
菌叢は葉の両面に生じるが、裏面にはやや少ない。やや永存性で菌糸は無色、薄壁、隔壁があり、径 4-6 μm.。
裂子嚢殻は菌叢中に散生し、やや扁平な球形、幼時黄色ないし飴色、後には褐色からほぼ黒色になり、径 100-130 μm.、裂子嚢殻表面は濃褐色厚膜、径 10-20 μm. 程度の多角形の細胞からなる。
付属糸は赤道付近からほぼ水平に放射状に伸び、12-20本程度、ほぼ直線状、無色、隔壁は無く、長さ 110-200 μm. 程度、基部付近は厚膜でやや表面は粗造だが、先端に向かって薄壁、平滑になる。
径 5.5-8 μm.、先端付近ではやや太くなり径 10 μm. 程度、上半には少数の油球がある。先端は1回転半程の渦巻き状で、その外径は 15-20 μm.。裂子嚢殻中に数個の子嚢を生じる。 --
子嚢は不整卵形、短柄があり、やや厚膜だが先端付近は薄くなる。4-6個の子嚢胞子を生じる。50-60 × 34-40 μm. --
子嚢胞子はたわら形、薄壁、内容物は細かい泡状で黄色味を帯びる。22-30 × 12-15 μm. --
分生子柄は菌叢から立ち上がり、28-80 × 9-12.5 μm.、1-2個の隔壁があり、先端に分生子を単生する。分生子は丸みを帯びた円筒形、ほぼ無色、薄壁、37-43 × 14-17 μm.
[コメント]
秋、エノキ (Celtis sinensis) の葉に発生し、市街地でも多い。付属糸の先端が渦巻き状になることが特徴の Uncinula 属は、現在 Erysiphe 属に統合されている。
Erysiphe 属等に見られる、孔口が無く、子嚢が底部から束生する子嚢殻 chasmothecium の訳語として、"裂子嚢殻" が提唱されているので、使用した。
"chasma" (ラテン語)、"χασμα" (ギリシャ語) は、割れめ、裂けめ等の意味。
ところで、エノキの学名を命名したのが、あの菌類分類学の祖 C.H. Persoon (Synopsis Plantarum. v. 1, 292) だという事を初めて知りました。
[参考文献]
Braun and Takamatsu (2000): Phylogeny of Erysiphe, Microsphaera, Uncinula (Erysipheae) and Cystotheca, Podosphaera, Sphaerotheca (Cystotheceae) inferred from rDNA ITS sequences - some taxonomic consequences. (Schlechtendalia ; 4, p. 1-33).
大谷 (1988): 日本菌類誌. 第3巻、子のう菌類. 第2号、ホネタケ目・ユーロチウム目・ハチノスカビ目・ミクロアスクス目・オフィオストマキン目・ツチダンゴキン目・ウドンコキン目.
[初掲載日: 2020.12.11] //
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