Fibroidium sp. no.1
Fibroidium sp. no.1
オオモクゲンジのうどんこ病菌。12月2日撮影。
[特徴]
菌叢は葉の表面に生じ、薄い白粉状、円形の斑状に拡がる。菌糸は永存性、径 4-5.5 μm.、付着器は低い乳頭状の突起でやや不明瞭、径 3.2-4 μm. --
分生子柄は菌糸から直立し、円筒形、基部に隔壁があり、上部にも少数の隔壁があり、径 7-8.5 μm.、柄足細胞は長さ 40-58 μm.、分生子を含めた全長は 180 μm. 程度までになる。数個の分生子を鎖生し、辺は鋸歯状。--
分生子は楕円形ないしやや樽型、無色、薄壁、平滑、大型の液胞が目立ち、フィブロシン体を含む。25.7-30.8 × 14.2-17.2 μm. --
完全世代は未確認。
[コメント]
オオモクゲンジ (Koelreuteria bipinnata) に生じたもの。
発生していたのは背丈ほどの半ば落葉した幼木で、花や実も無く特徴が乏しいが、少し離れた所にオオモクゲンジの成木があったこと、2回羽状複葉や冬芽の特徴などから同定は間違っていないと思う。
Miyake (1913) で、北京南口からオオモクゲンジ上の菌として記載された Uncinula koelrenteriae I. Miyake には、分生子世代の記述が無い。
Shin and Park (2011) は、韓国のモクゲンジ (K. paniculata) 上のうどんこ病菌を同一菌と同定し、分生子世代も報告している。
それによると、菌叢は裏面性、大型と小型2種の分生子を生じるとされ、Sawadaea koelreuteriae (I. Miyake) H.D. Shin & M.J. Park の新組み合わせを提唱している。
京都産オオモクゲンジ上の菌では小型分生子を確認できていないが、Sawadaea 属菌の寄主はカエデ属に限定されると思っていたので、見落とした可能性がある。
一通り検鏡し、標本にせずに捨てた後で Sawadaea への転属を知り、後日再訪した時にはすべて落葉していたので、再検できずじまいである。
それ以外の分生子世代の形態的特徴はほぼ一致すると思うが、フィブロシン体を含む分生子が鎖生する等の特徴から、仮に Fibroidium 属菌とし、来シーズン以降の課題としておく。
[参考文献]
Miyake (1913): Studien über chinesische Pilze. (The Botanical magazine ; 27(314), p. 37-44 + 1 plate).
Shin and Park (2011): Sawadaea koelreuteriae comb. nov., a powdery mildew of Koelreuteria paniculata. (The Journal of microbiology ; 49(5), p. 862-866).
[初掲載日: 2024.01.15] //
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