Gyromitra parma
Gyromitra parma (Breitenb & Maas Geest.) Kotlaba & Pouzar = Discina parma Breitenbach & Maas Geesteranus
オオシトネタケ。4月21日撮影。
[特徴]
朽木上に単生あるいは少数が群生する。子実体は直径 3-9 cm.、肉厚で不整な椀形から皿形になり、さらには凸型に反り返る。
子実層面は成熟すると波うってちりめん状の皺を生じるものも多く、褐色から赤褐色ないし紫褐色。縁は全縁、外面は淡色でほとんど平滑、粘性は無く、肉質はやや脆い。
中央に太くて短い柄がある。柄は乳白色から淡褐色、不明瞭な縦皺がありわずかに椀に向かって脈状に伸びる。--
子嚢は円筒形、先端には蓋がありメルツァー液には呈色しない。8胞子を一列に生じる。325-400 × 22-28 μm. --
側糸は糸状、隔壁があり時に分岐する。径 3.8-5.5 μm.、先端は次第に膨らんで径 10 μm. までになり、細かい褐色の内容物がある。--
子嚢胞子は楕円形、成熟した胞子はやや黄色味を帯びる。中央に1個の油球があり、あるいは両側にも一個づつのやや小さな油球がある。
胞子表面には隆起した網目模様がある。網目は多角形で径 0.6-2.5 μm.、網目の結合部はやや高く伸びて側面では高さ 1.0 μm. 程度だが、
両端部では高さ 3.0 μm. 程度までに伸びて数本の刺状に見える。網目状突起を除いて 23.2-28.6 × 11.5-12.9 μm. --
托組織はほぼ一様な絡み合い菌組織で径 20 μm. までの無色薄壁の菌糸よりなる。表面近くでは細めの菌糸がやや密に絡み合うが髄層との境界は不明瞭。
[コメント]
春、主にブナ科等の広葉樹の朽木に発生するが、マツ等の針葉樹の朽木にも発生する事がある。
いくつかの図鑑には子嚢胞子が図示されていて、両端には網目とは別に刺状突起があるように描かれているものがある。
また、スイス図鑑の子嚢胞子の検鏡図では網目がかなり細かい。
京都産のものを観察した限りでは、網目の交差部が高く伸びて刺状になっていて、網目から独立した明瞭な刺状突起は認められず、また、網目は比較的粗く、各辺は直線的である。
別種かとも思ったが、顕微鏡写真を比較すると国内外の子嚢胞子に明瞭な差は無さそうだ。
Kotlaba and Pouzar (1974) に拠って Gyromitra 属に移されていて、最近の分子系統解析の結果からも支持されているので、表記の学名に改めた。
Iguchi (1988) によって付けられた和名はオオナミシトネタケ。
これだけ大きな子実体をつくるチャワンタケに最近まで学名が付いていなかったことと、記載後は各地から次々と報告されているのが驚き。京都付近でも比較的普通種。
[別図2]
5月19日撮影。子実体の寿命は長く、子嚢胞子の成熟は遅い。京都付近では3月初旬頃には幼菌が発生し始めるが、子嚢胞子が成熟するのは4月後半頃からで、
かなり大きな子実体を採集しても子嚢が未熟なこともある。写真の子実体は4月に見つけたものだが、子嚢胞子の成熟を待っているうちに周辺部にカビが生えてしまった。
[別図3]
4月16日撮影。やや未熟な子実体。子嚢胞子の網目模様は殆んど形成されていなかった。
[別図4]
4月21日撮影。表面の皺は、子実体によって差が大きい。
[参考文献]
Breitenbach and Maas Geesteranus (1973): Eine neue Discina aus der Schweiz.
(Proceedings of the Koninklijke Nederlandse Akademie van Wetenschappen. Series C, Biological and medical sciences ; v. 76(1), p. 101-108).
Iguchi (1988): Note on Discomycetes in eastern Japan. 1. The genus Gyromitra. (Bull. Saitama Mus. Nat. Hist. ; no. 6, p. 21-26).
Kotlaba and Pouzar (1974): Další lokality ucháče svazčitého -Gyromitra fastigiata (Krombh.) Rehm- v Čechách s posnámkami ka rodové příslušnosti ucháčů a destic. (Česká mykologie ; 28(2). p. 71-75).
[初掲載日: 2009.06.01, 最終更新日: 2021.05.18] //
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