Helvella sp. no.2
Helvella sp. no.2
"オダワラノボリリュウ"。11月3日撮影。
[特徴]
子実体は比較的大型で子実層のある頭部と柄からなり、高さ 5-12 cm. に達する。
頭部は乱れた鞍形で不規則に反り返り、直径 2-4 cm.。縁は内側に巻き、しばしば裂ける。
表面は平滑あるいは米粒大の凹凸があり、中央付近は波打つものが多い。茶褐色、淡ココア色、やや赤みがかった褐色など。
裏面はやや白っぽく全体に微毛状、柄とは癒着せず、脈状の隆起が柄から縁近くまで伸びるが縁部ではちりめん状の皺になる。
柄は径 1-1.5 cm. 程度で縦に深い溝があり、横断面をみると不規則なY字分岐を放射状に繰り返した構造になっている。
淡褐色から褐色でほとんど平滑ないしわずかに微毛状。--
子嚢は円筒形、薄壁、有蓋、8胞子を一列に生じる。メルツァー試薬に呈色しない。280-320 × 14-18 μm. --
側糸は糸状、基部で分岐するものもある。上半はほとんど無色の一様な内容を含み下方には数個の隔壁があり、径 3.0-4.0 μm. 程度。
先端はやや膨らんで 4.5-8.5 μm. になる。--
子嚢胞子は広楕円形、無色、薄壁、平滑。中央に大きな油球が一つ、周囲に泡状の小さな油球が少数ある。16.5-19.8 × 11.0-12.0 μm. --
托髄層は無色薄壁、径 2.5-5.8 μm. の菌糸よりなる密な絡み合い菌糸組織、
外皮層は厚さ 150 μm. 程度、やや厚膜、殆んど無色、18-45 × 6-24 μm. の長円形ないし楕円形の細胞からなり、
表面からは高さ 100-200 μm. 程度の細円錐状の束となって毛状に立ち上がる。
[コメント]
シイ林やカシ林の林道脇などの地上に単生あるいは数本程度がかたまって発生する。発生は秋から初冬頃に限られるようだ。
ノボリリュウ (Helvella crispa) よりもかなり色が濃く、頭部裏面は顕著な毛状である。
沢田 (2002) は神奈川県小田原入生田から子実体全体が褐色の Helvella sp. を記録し、"オダワラノボリリュウタケ" の和名を提唱している。
この "オダワラノボリリュウタケ" の子嚢胞子は 10-12 × 10-15 μm. の亜球形で、私の採集したものの計測値とはかなり異なる。
また糸状の側糸のほかに子嚢状の側糸が記録されていて、後者を確認できなかったが、これは空あるいは不熟の子嚢の誤認ではないかと思う。
上記のように相違点もあるけれど、肉眼的な特徴や共に秋に採集されている点などから同種だろうと考えているので、暫定的にこの和名を使う事にして詳細な検討を待ちたい。
ただ、ノボリリュウ類の和名には最後に「タケ」を付けないのが一般的な様なので「オダワラノボリリュウ」としておく。
既にいくつかのサイトで紹介されているので国内での分布は広そうだ。特徴的なノボリリュウ類だが、今のところ種名は分からない。未記載種かと思う。
[別図2]
かなり淡色の子実体。11月3日撮影。
[別図3]
10月28日撮影。
[参考文献]
沢田 (2002): オダワラノボリリュウタケ : 小田原で採集された Helvella の報告. (くさびら ; 24, p. 36-37).
[初掲載日: 2005.12.26, 最終更新日: 2016.12.16]