Hyaloperonospora sp. no.1

Hyaloperonospora sp. no.1

Hyaloperonospora sp. no.1
スカシタゴボウのベと病菌。12月23日撮影。

[特徴]
葉に不定形の病斑を生じる。病斑部は脱色して白緑色や淡黄色から淡黄褐色になって縮葉し、裏面はややまばらに分生子柄を生じて霜状あるいは白粉状。 菌糸は宿主組織の細胞間を走る。吸器は寄主細胞内に形成され、浅裂した袋状ないし団塊状、25-40 × 20-30 μm. 程度。-- 分生子柄は葉の裏面、気孔から生じ、普通は単生、まれに2本生じ、無色、無隔壁、やや厚膜、平滑、気孔を貫通する部分は径 3-5 μm.、基部は急に膨らんで時にやや球根状になり径 18-23 μm.、 最初の分岐までの長さは 340-520 μm.、中央附近で径 16-25 μm.、少なくとも最初の分岐は単軸型で、分岐を叉状に数回繰り返して樹状に拡がる。 末端枝はやや湾曲あるいは捩れ、8-22 × 1.6-2 μm.、先端に向かって細まり、分生子を単生する。-- 分生子は広楕円形で分離痕は認められず、無色、薄壁、平滑、内容物は微泡状、25.4-31.5 × 20.5-24.8 μm.、発芽様式は未確認。-- 卵胞子は観察できなかった。

[コメント]
稲刈り後の畦道沿いのスカシタゴボウ (Rorippa palustris) に生じていたもの。 検鏡してべと病菌類だということはすぐにわかったので、日本産菌類集覧の寄主索引から簡単に Peronospora nasturtii-palustris S. Ito & Tokunaga にたどり着けたと思ったが、伊藤 (1936) には分生子が "12-24 × 10-18 μ." とあり、かなり小型で一致しない。 同属のイヌガラシ (Rorippa indica) [スカシタゴボウは、短くて太めの果実で区別できる] に生じる Peronospora nasturtii-montani Gäumann の分生子は、"19-36 × 16-31 μ." で、範囲内に収まり、他の特徴も近いが、Lee et al. (2017) に拠れば分生子は "subglobose, (19-)24.0-30.0(-36) μm long (av. 27), (16-)21-27(-31) μm wide (av. 24)" となっていて、かなり球形に近いのが気になる。 近年の分子系統解析により、アブラナ科を寄主とする多くの種が Hyaloperonospora 属として Peronospora 属から分離されていて、上記2種も Hyaloperonospora 属に移されている。 イヌガラシ属から記録された Hyaloperonospora (Peronospora) 属菌は他にもあるが、形態が似通っていて顕微鏡観察だけでは区別が難しそうなので Hyaloperonospora 属の未同定種としておく。

[別図2] 12月23日撮影。葉の表側。

[参考文献]
Constantinescu and Fatehi (2002): Peronospora-like fungi (Chromista, Peronosporales) parasitic on Brassicaceae and related hosts. (Nova Hedwigia ; 74(3-4), p. 291-338).
Lee et al. (2017): Diversity, phylogeny, and host-specialization of Hyaloperonospora species in Korea. (Mycobiology ; 45(3), p. 139-149).
伊藤 (1936): 大日本菌類誌 第一巻 藻菌類. 養賢堂.
川口 (2019): 日本産べと病菌の分類学的研究. (三重大学大学院生物資源学研究科修士論文).

[初掲載日: 2025.01.05] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2025.