Hymenoscyphus fructigenus

Hymenoscyphus fructigenus

Hymenoscyphus fructigenus (Bulliard) Gray
ヒメノスキフス フルクティゲヌス。10月21日撮影。

[特徴]
腐朽した果皮などから発生し、やや群生する。子嚢盤はビョウ型、径 1-2.5 mm.、子実層面はクリーム色からややくすんだ淡黄色。 縁は全縁、外面はわずかに白っぽく、ほとんど平滑、ルーペ下では微粉状に見える。柄は中心生、無毛、類白色、普通は 2-4 mm. 程度だが、基質が地中にある場合などは 10 mm. 近くに達する。 -- 子嚢は棍棒形、上部はやや円錐状で肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で青変する。基部にかぎ形構造は認められない。8胞子をほぼ2列に生じる。94-118 × 7.7-8.3 μm. -- 側糸は糸状、ほぼ上下同幅、隔壁があり、時に分岐し、径 2.2-3.0 μm.、上半には淡黄色で泡状の内容物がある。-- 子嚢胞子は長楕円ないし頭部の丸い紡錘形で末端側はやや尖り、左右不対称 (scutuloid)、無色、薄壁、平滑、数個の油球が目立ち、時に中央部に隔壁を生じて2細胞になる。14.4-17.2 × 3.6-4.2 μm. -- 托組織髄層は無色薄壁で径 3 μm. までの菌糸からなる絡み合い菌糸組織、外皮層は厚さ 55-70 μm.、30 × 10 μm. 程度までのほぼ無色、やや厚膜の矩形状細胞からなる。 最外層には淡黄色の内容物を含む径 2-3 μm. 程度の菌糸が走り、時に短い突起状の分枝が立ち上がる。

[コメント]
落下した古いコナラ属の堅果(ドングリ)に発生したもの。画像はおそらくアラカシ (Quercus glauca) のもので、普通は殻斗や果皮から生じる。 夏から秋にかけて、ドングリ以外の様々な種子などからも似た菌が発生し、文献では寄主として他に Acer、Alnus、Carpinus、Corylus、Fagus 等、様々な植物が記録されている。 肉眼的にも顕微鏡的にも変異が大きい種のようにみえるが、明瞭な区別点は見出し難い。おそらく集合種で、複数種に分割されるものだと思う。 Bulliard が Peziza fructigena として記載した際に図示された子実体 (Histoire des champignons de la France, planche 228) は明らかにドングリ(あるいはクリ)から発生しているので、ドングリから生じる菌にこの学名を当てておく。 Hosoya (2009) は邦産のドングリ上の菌を "arising from croziers" と記述しているが、京都産の菌ではかぎ形構造を確認できなかった。ドングリに発生するものも一種ではないのかもしれない。

[別図2] 10月21日撮影。

[参考文献]
Dennis (1956): A revision of the British Helotiaceae in the herbarium of the Royal Botanic Gardens, Kew, with notes on related European species. (Mycological papers ; 62).
Hosoya (2009): Enumeration of remarkable Japanese discomycetes (3): first records of three inoperculate Helotialean discomycetes in Japan. (Bulletin of the National Museum of Nature and Science. Series. B, Botany ; 35(3), p. 113-121).
Lizoň (1992): The genus Hymenoscyphus (Helotiales) in Slovakia, Czechoslovakia. (Mycotaxon ; 45, p. 1-59).

[初掲載日: 2022.06.18] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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