Hymenoscyphus cf. lasiopodius

Hymenoscyphus lasiopodius

Hymenoscyphus cf. lasiopodius
ヒメノスキフス ラシオポディウス類似種。11月8日撮影。

[特徴]
枯茎に発生する。子嚢盤はやや肉厚のビョウ型、径 3 mm. までになり、淡黄色、ほぼ平開し、後に凸型になる。縁は全縁、外面は平滑で僅かに黄色味を帯びる乳白色。 柄は比較的太く、乳白色、基部附近にはフェルト状の菌糸が纏わりつく。肉質は全体に柔らかいが、ゼラチン質ではない。-- 子嚢は円筒形、先端は肥厚し頂孔はルゴール試薬で青変する。基部にはかぎ形構造がある。8胞子をほぼ2列に生じる。 122-153 × 10-15 μm. -- 側糸は糸状、基部付近に隔壁があり、径 1.5-2 μm.、先端はやや膨らんで 2-3 μm.、上半にはほぼ無色あるいは僅かに黄色味を帯びる微泡状の油球を含む。-- 子嚢胞子は両端の丸い長紡錘形で僅かに湾曲して弓型になるものが多く、無色、薄壁、平滑、全体に細かい油球を含み、後にほぼ等間隔に3隔壁を生じ4細胞になる。25.5-35.8 × 5.1-5.8 μm. -- 托組織髄層は無色薄壁で径 5-12 μm. のソーセージ形の細胞からなり、外皮層近くでは径 2-3 μm.、ほぼ平行に走る。 外皮層は厚さ 40-60 μm.、薄壁ないしやや厚膜で無色、20-40 × 10-15 μm. 程度までの丸みを帯びた矩形状細胞からなり、縁に向かって細くなり径 5-10 μm. 程度、縁細胞は球状ないし棍棒状になる。 外面には径 3 μm. 程度の淡黄色の内容物を含む菌糸がまばらな網状に広がる。先端は僅かに立ち上がって膨らみ、径 5 μm. 程度になる。

[コメント]
流水脇の半ば水に浸って腐朽したクリンソウ (Primula japonica) の花茎に発生していたもの。肉質は柔らかいがゼラチン質ではないので Hymenoscyphus 属あたりだと思う。 3隔壁を生じる Hymenoscyphus 属菌は少ないが、黄色の子嚢盤、柄が淡色、濡れた環境に生じるなどの特徴と合わせると Hymenoscyphus lasiopodius (Patouillard) Dennis に近い。 Dumont and Carpenter (1982) では、中南米では普通種とされ、Zhuang and Wang (1998) によって中国からも記録されている。 MyCoPortal で検索すると、ニューヨーク植物園 (New York Botanical Garden) の "cfr. Hymenoscyphus lasiopodium" とされる日本産標本が3点ヒットする [最終閲覧確認 2025.04.15]。 R.P.Korf 等による1950年代末の採集品で、採集地は高知県越知町 (On decorticated vine) と千葉県清澄山 (On stem of Boehmeria [カラムシ属] sp.)、同定者は K.P. Dumont。 Dumont and Carpenter (1982) には引用されていないので詳細がわからないが、日本にも類似種が分布していることは確かなようだ。 Dumont が同定した菌と同種かどうかはさておき、仮に "Hymenoscyphus cf. lasiopodius" としておく。

[別図2] 11月8日撮影。

[参考文献]
Dumont and Carpenter (1982): Los hongos de Colombia - VII. Leotiaceae.- IV: Hymenoscyphus caudatus and related species from Colombia and adjacent regions. (Caldasia ; 13(64), p. 567-602).
Zhuang and Wang (1998): Some new species and new records of Discomycetes in China. VIII. (Mycotaxon ; 66, p. 429-438).
庄 主編 (2018): 中国真菌志 第56巻 柔膜菌科. 科学出版社.

[初掲載日: 2025.04.18] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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