Hymenotorrendiella sp. no.1
Hymenotorrendiella sp. no.1
ヒメノトレンディエラ属菌。8月21日撮影。
[特徴]
落葉に散生する。子嚢盤は有柄ビョウ形、径 1.2 mm. 程度まで、子実層面は平滑、乳白色から汚クリーム色、後には象牙色。
縁は全縁、外面は僅かに濃色、黒褐色の直線的剛毛をまばらに生じ、縁付近の毛は長い。柄は中心生、やや淡色に見え、短い剛毛が僅かにある。--
子嚢は円筒形、薄壁、先端は肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で小さく青変する。基部にかぎ形構造は見られない。8胞子をほぼ2列に生じる。90-110 × 8-9 μm. --
側糸は糸状、ほぼ上下同幅、隔壁があり、上半は小泡状でほぼ無色の内容物があり、メルツァー試薬で赤褐色になる。径 1.5-2.5 μm. --
子嚢胞子は紡錘形でやや左右不対称、無色、薄壁、平滑、数個の油球が目立つ。両端には不明瞭な鞘状の被膜があるが脱落しやすい。14.8-16.6 × 3.4-4.2 μm. --
托組織髄層はほぼ無色、薄壁、径 10 μm. 程度までの細胞からなるやや平行に走る絡み合い菌組織で外皮層との境界はやや不明瞭。
外皮層は厚さ 50 μm. 程度まで、僅かに黄褐色を帯びる 20-30 × 5-12 μm. 程度の細胞からなる矩形菌組織で、ゼラチン化は認めにくい。
表面には側糸と同様の泡状内容物を含む径 3-4.5 μm. の菌糸が走る。
外面の剛毛は外皮層の内部から生じ、黒褐色、厚膜、平滑、隔壁があり、先端に向かって細まり、先端はあまり尖らず、
140-350 × 5.8-9.2 μm.、基部は分岐せず細くなって直根状、僅かに曲がって組織内に入り、末端は截形、径 3-3.5 μm.
[コメント]
公園に植栽されたヤマモモ (Morella rubra) の落葉に生じていたもの。子座様の組織は確認できなかった。
ニュージャージーでヤマモモに近縁の Myrica cerifera(シロコヤマモモ、現在は Morella cerifera とされる)から記録された Zoellneria callochaetes (Ell. & Everh.) Dennis は多くの特徴が良く一致する。
Spooner (1987) はこれを Torrendiella eucalypti (Berk.) Spooner のシノニムとした。
Johnston et al. (2014) は、Hymenotorrendiella 属を新設し、Torrendiella 属とされていた菌の一部を転属させ、
T. eucalypti も Hymenotorrendiella eucalypti (Berk.) P.R. Johnst., Baral & Galán とし、
Zoellneria callochaetes は T. eucalypti と良く一致するが、寄主と分布地の違いから別種だろうと述べている。
京都産の菌は Hymenotorrendiella 属の特徴を持つと考えるので、その一種としておく。
[別図2]
8月21日撮影。側面。
[別図3]
8月21日撮影。外面。
[参考文献]
Dennis (1963): A redisposition of some fungi ascribed to the Hyaloscyphaceae. (Kew bulletin ; 17(2). p. 319-379).
Johnston et al. (2014): The phylogenetic relationships of Torrendiella and Hymenotorrendiella gen. nov. within the Leotiomycetes. (Phytotaxa ; 177(1), p. 1-25).
Spooner (1987): Helotiales of Australasia: Geoglossaceae, Orbiliaceae, Sclerotiniaceae, Hyaloscyphaceae. (Bibliotheca mycologica ; 116).
[初掲載日: 2021.11.26] //
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