Hypomyces cervinigenus
Hypomyces cervinigenus Rogerson & Simms.
ノボリリュウ類の寄生菌。7月5日撮影。
[特徴]
子嚢殻は寄主であるノボリリュウ類の子実体表面に群生する。
寄主のほぼ全面に子嚢殻が形成される場合と、一部分に形成される場合があるが、後者の場合は残りの部分には厚膜胞子が形成される。--
スビクルムは肉眼では白色、隔壁のある無色の菌糸からなるがあまり目立たない。
子嚢殻はスビクルム上に形成され、周辺部ではややまばら、中心部では非常に密生する。乳白色半透明。
卵形ないし洋梨形、 190-270 × 140-230 μm.、表面はほぼ平滑で径 12 μm. 程度までのやや厚膜の細胞よりなる。--
子嚢は円筒形、薄壁。8胞子を一列に生じる。先端はやや平らになって厚膜。88-120 × 4.2-5.6 μm. --
子嚢胞子は紡錘形でやや左右不対称、無色薄壁、平滑。両端は尖るが、付属物は無い。中央か、やや下よりに隔壁ができ2細胞になる。
隔壁部はわずかにくびれて上部細胞がやや大きく顕著な内容物は見られない。13.8-17.2 × 2.9-3.8 μm.
普通はアナモルフ (= Mycogone cervina Ditmar.) のみ見られることが多い。
頭部表面(子実層面)を中心に発生するが最後には寄主のほぼ全体に広がり厚い菌叢を形成する。
初めは薄く霜がついたような白粉状だが後には厚い粉状になり肌色ないしやや赤みを帯びた薄いココア色になる。
出芽型分生子とアレウロ型分生子の2種類の胞子を形成する。--
出芽型分生子は長楕円形ないし長卵型、無色薄壁。0-2 隔壁 (1隔壁を持つ胞子が多い)。13.4-25.8 × 3.6-5.8 μm. --
アレウロ型分生子は分岐した短い菌糸先端に形成される。大小2つの饅頭形の細胞がくっついたダルマ状。
先端の細胞は径 11.2-14.2 μm. でやや厚膜、淡ピンク色、表面には高さ 2.0 μm. 程度の針状突起がある。
基部の細胞は無色平滑、直径 6.2-8.5 μm.
[コメント]
ノボリリュウ類、特にクロアミガサタケやナガエノチャワンタケ等に夏頃発生するが子嚢殻の形成は稀な様である。
写真の寄主はナガエノチャワンタケ (Helvella macropus)。
寄生されたノボリリュウは特に頭部が奇形化し、子実層は正常に発達しない場合が多い。
子嚢胞子の大きさは文献の値と比べると小さめだが、変異の範囲内だと思う。
子嚢殻が形成された寄主は比較的硬いが、アナモルフが発達した場合は柔らかくて寿命が短く、やがて崩れていく。
[別図2]
厚膜胞子が形成されたもの。7月1日撮影。
[参考文献]
Rogerson and Simms (1971): A new species of Hypomyces on Helvella. (Mycologia ; 63, p. 416-421).
[初掲載: 2006.07.05; 最終更新: 2008.11.11]