Hypomyces chlorinigenus
Hypomyces chlorinigenus Rogerson & Samuels
イグチ類の寄生菌。7月13日撮影。
[特徴]
初めは寄主の傘表面から孔口部にかけて白色の菌叢が広がり、後には寄主全体に及んでやや黄土色を帯びる。--
子嚢殻は寄主の孔口部にスビクルムに半ば埋没して密生し(最終的には寄主表面全体に発生するようである)、肉眼では淡ワイン色を帯びて見える。
球形から洋梨形、表面はほぼ平滑。直径 140-210 μm. --
子嚢は円筒形、82-130 × 4.0-5.0 μm.、8胞子を一列に生じるが4胞子のみ成熟するものが多い。--
子嚢胞子は広紡錘形で2細胞。表面はほとんど平滑で無色。10.8-13.8 × 3.5-4.5 μm.。両端は尖らず、隔壁部はややくびれ、下半の細胞がやや細長いものが多い。--
菌叢中に厚膜胞子が形成される。短い分枝の先端に形成され、長卵形ないし弾丸形、厚膜で黄色。24.0-33.8 × 15.2-18.5 μm.、
内容は泡状物が少量あり、表面には不規則な縦の畝状隆起が片面に1-3本程度ある。
厚膜胞子と別に分生子も菌叢中に散在するが、分生子形成細胞は確認できなかった。楕円形、無色薄壁、8.6-10.0 × 4.5-5.7 μm.
[コメント]
夏に各種のイグチ類に発生するが Hypomyces chrysospermus よりは少ない。
掲載した画像はミヤマベニイグチ (Boletellus obscurecoccineus) に発生したもの。
中央のイグチは孔口面に子嚢殻が、傘表面にはアナモルフ (Sepedonium chlorinum) の厚膜胞子が形成されていた。
長卵形の特徴的な厚膜胞子が全面に発生して子嚢殻が見られない事も多い。
[別図2]
小型のイグチ類の子実体表面ほぼ全面に子嚢殻が形成されたもの(柄の部分)。厚膜胞子や分生子も形成されていた。7月19日撮影。
[参考文献]
Rogerson and Samuels (1989): Boleticolous species of Hypomyces. (Mycologia ; 81(3), p. 413-432).
[初掲載: 2008.07.28, 最終更新日: 2014.07.28]