Hysterium sp. no.1

Hysterium sp. no.1

Hysterium sp. no.1
ヒステリウム属菌。4月22日撮影。

[特徴]
スギの落葉上にやや群生する。偽子嚢殻(裂孔子嚢果)は表在、紡錘形、黒色、炭質、表面はほぼ平滑、上面中央の縦方向にほぼ全長のスリット状の裂目があるが、成熟してもほとんど開かない。長径 1 mm. まで。-- 子嚢は円筒形、厚膜、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を部分的に2列に生じる。62-66 × 6-7.2 μm. -- 明瞭な側糸様細胞を観察できなかった。-- 子嚢胞子は長楕円形、時に僅かに左右不対称、初めほとんど無色で後には一様な淡褐色、やや厚膜、平滑、ほぼ等間隔に3隔壁があり4細胞。隔壁部はわずかに括れる。14.8-17.2 × 4.6-5.1 μm.

[コメント]
スギ (Cryptomeria japonica) の落枝落葉に発生していたもの。スギの葉に発生するヒステリウム類として Hysterium thujopsidis Sawada(アスナロ枝枯病菌、寄主はアスナロ、スギ)が記録されている。 澤田 (1952) によると子嚢胞子は 13-13.5 × 4.5-5 μm. でやや短い。 H. thujopsidis については、柏谷 (1957) がヒバの枝枯病として種名を挙げているが、澤田の記載以外に特徴を記述した文献を見ることができず、詳細がよくわからない。 特徴は似ていると思うが、おそらく別種だろう。なお、H. thujopsidis のホロタイプを検討した Amano (1983) は、この菌の子嚢は一重壁子嚢であり、"phacidiaceous fungi" だろうとしている。 Phacidium 類は典型的には単細胞で無色の子嚢胞子を生じる。

[参考文献]
Amano (1983): Saprobic loculoascomycetous fungi from Japan. 1. Hysteriaceous fungi. (Transactions of the Mycological Society of Japan ; 24, p. 283-297).
Boehm et al. (2009): A molecular phylogenetic reappraisal of the Hysteriaceae, Mytilinidiaceae and Gloniaceae (Pleosporomycetidae, Dothideomycetes) with keys to world species. (Studies in mycology ; 64, p. 49-83).
柏谷 (1957): 横濱營林署管内に於ける樹病の発生状況について. (第九回造林技術分担研究報告会記録 ; p. 307-315).
澤田 (1952): 東北地方菌類調査報告 (II) 子嚢菌類及び原菌類. (林業試験場研究報告 ; 53, p. 135-194).

[初掲載日: 2024.07.10] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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