Hysterographium sp. no.1
Hysterographium sp. no.1
ヒステログラフィウム属菌。11月23日撮影。
[特徴]
朽木材部に群生し、径 1-3 cm. 程度に広がる。
子嚢果は表在性、長楕円ないし長紡錘形、長さ 1.5 mm. まで、幅 0.2 mm. 程度。
表面は黒色、やや粗造、上面にほぼ全長に亘るスリット状の割れ目があり、湿時にはわずかに開いて黒褐色の子実層を現す。--
子嚢は広楕円形ないし広卵形、厚膜、基部は急に細まり短い尾状になる。先端に顕著な肥厚は見られず、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を不規則な2列に生じる。97-115 × 28-34 μm. --
偽側糸は糸状、無色、隔壁があり径 1.5-2.0 μm.、上半は赤紫色の物質に覆われ、先端は膨らんで径 14 μm. までになり、互いに合着して子実上層を形成する。--
子嚢胞子は長楕円形でやや左右不対称、緑褐色、やや厚膜、横に7隔壁、縦に片面で 1-3隔壁があり、時に不明瞭な横隔壁でつながる。
隔壁部は括れないかあるいは僅かに括れるが、中央の横隔壁は明瞭に括れる。被膜は認められない。34.3-43.0 × 12.0-14.3 μm.
[コメント]
コナラの伐採木(ナラ枯れ被害で伐採されたもの)の木口面に群生していた物。
Boehm et al. (2009) の属までの検索表 (p. 55-56) をたどると Hysterographium に落ちるが、種までの検索表 (p. 67-68) では行き場を失ってしまう。
日本から記録された Hysterographium minus Amano は子嚢胞子がやや短く (26-38 × 10-15 μm.)、
Tanaka and Hosoya (2006) が屋久島から記録した Hysterographium fraxini (Pers.) De Not. は特徴が似ているが子実上層の赤褐色の物質についての記述が無い。
[参考文献]
Amano (1983): Saprobic loculoascomycetous fungi from Japan 1. Hysteriaceous fungi. (Trans. mycol. Soc. Japan ; 24, p. 283-297).
Boehm et al. (2009): A molecular phylogenetic reappraisal of the Hysteriaceae, Mytilinidiaceae and Gloniaceae (Pleosporomycetidae, Dothideomycetes) with keys to world species. (Studies in mycology ; 64, p. 49-83).
Tanaka and Hosoya (2006): Some new records of Loculoascomycetes from Yakushima Islands, Southern Japan. (Bull. Natn. Sci. Mus., Tokyo. Ser. B ; 32(4), p. 151-160).
[初掲載日: 2017.01.27]