Lachnum sp. no.4

Lachnum sp. no.4

Lachnum sp. no.4
ウラジロの葉柄に生じるラクヌム属菌。3月27日撮影。

[特徴]
子嚢盤は有柄、深い椀状からやや平らに開くが縁はやや内屈する。直径 0.8 mm. 程度まで。 子実層面は淡黄色、外面は黄色の微毛に覆われ、ルーペ下では淡黄褐色の細点が見える。柄は細く同様の毛に覆われるがやや白っぽい。-- 子嚢は円筒形、先端は肥厚し頂孔はメルツァー試薬で青変する。8胞子をほぼ2列に生じる。42-52 × 3.4-4.0 μm. -- 側糸は太針状、先端はやや丸みを帯び、無色、あるいは淡黄色の一様な内容を含み、子嚢より 10 μm. 程突出する。隔壁は基部に1つある。最大径 3.5 μm. 程度。-- 子嚢胞子は長紡錘形、時に左右不対称、両端はやや尖り、無色。比較的大きな油球が2(あるいは4)個と小さな油球が一列に並ぶものが多い。11.0-12.0 × 1.4-2.0 μm. -- 外面の毛は直線的で直径 3.5-4.2 μm.、上下同幅で少数の隔壁があり長さ 35-55 μm. までになる。先端は丸い。 表面は淡黄色の微疣状で、琥珀色の不定形ヤニ状の物質が点々と付着している。先端に帽状に付着するものも多く、複数の毛が合着される場合もある。

[コメント]
枯れたウラジロ (Gleichenia japonica) の葉柄に群生していたもの。春から初夏にかけて比較的普通に見つかる。 シダ類に生じる Lachnum 属は多く、黄色系の種もいくつかあるがおそらく L. pteridophyllum (Rodway) Spooner だろう。 子嚢胞子の長さは Haines (1980) に拠れば 11-17 μm.、Spooner (1987) では (12.0-)14.5-19.0(-24.5) μm. とあり、やや短めだが変異の範囲と考えてよいと思う。 Nagao and Doi (1996) は屋久島等から記録し 10-15 μm.、Otani (1975) はパプアニューギニア産を 10.0-13.0 μm. としている。 Ye and Zhuang (2002) は四川青城山から子嚢と子嚢胞子がやや小型で京都産とほぼ同じ計測値のものを L. cf. pteridophyllum として記録し、 "It might be a distinct variety of L. pteridophyllum" としている。 L. pteridophyllum は熱帯から亜熱帯のヘゴ類等の木生シダ上での記録が多いようだ。

[別図2] 6月13日撮影。

[参考文献]
Haines (1980): Studies in the Hyaloscyphaceae I: some species of Dasyscyphus on tropical ferns. (Mycotaxon ; 11, p. 189-216).
Nagao and Doi (1996): Discomycetes on decayed tree fern (1). Lachnum pteridophyllum (Rodway) Spooner new to Japan. (Bull. Natn. Sci. Mus., Tokyo, Ser. B. ; 22(1), p. 19-22).
Otani (1975): Some Discomycetes collected in Papua New Guinea. (Reports on the cryptogams in Papua New Guinea ; p. 5-41).
Spooner (1987): Helotiales of Australasia: Geoglossaceae, Orbiliaceae, Sclerotiniaceae, Hyaloscyphaceae. (Bibliotheca mycologica ; 116).
Ye and Zhuang (2002): New records of Lachnum from temperate China. (Mycosystema ; 21(1), p. 122-124).

[初掲載日: 2006.05.01. 最終更新日: 2015.07.07]