Lanzia sp. no.1

Lanzia sp. no.1
ランツィア属菌。8月8日撮影。
[特徴]
ドングリの総苞に生じる。子嚢盤は椀形からビョウ型に開き、径 2-4 mm.、子実層面は淡いベージュ色ないしやや紫色を帯びた淡橙褐色、縁は全縁、僅かに濃色に縁どられる。
外面はほとんど平滑あるいはわずかに微粉状、ほぼ同色からやや濃色、柄は比較的細く、無毛、基部付近は黒ずむ。--
子嚢は円筒形、先端は肥厚し、頂孔はルゴール試薬で青変する。8胞子をほぼ一列に生じ、後には不規則な2列になって固まる。基部にはかぎ型構造がある。85-98 × 6-7.5 μm. --
側糸は糸状、下部に隔壁があり、上下同幅、内容は一様でほとんど無色、径 2 μm. 程度。時にやや太めで径 4.5 μm. までになり、黄褐色の一様な内容物をもつ側糸が少数混在する。--
子嚢胞子は卵形ないし楕円形、無色、薄壁、平滑、両端に小さな油球を含むものが多い。7.5-11.5 × 3.4-3.8 μm. --
托組織髄層は無色薄壁で径 15 μm. までの隔壁部で括れる菌糸からなる絡み合い菌組織で、外皮層との境界部ではやや細く、ほぼ平行に走る。
外皮層は厚さ 100 μm. 程度まで、20-45 × 9-15 μm. 程度の丸みを帯びた淡色の矩形状細胞からなる。組織に顕著なゼラチン化は見られない。
托表面には径 3-4 μm. の菌糸が走り、先端細胞は棍棒状あるいは紡錘形に膨らんで径 6-10 μm. になってわずかに立ち上がり、淡褐色の内容物を含む。
[コメント]
夏から秋頃、落下した前年のアベマキ (Q. variabilis) やクヌギ (Quercus acutissima) の総苞に生じ、比較的普通種。
子嚢盤は総苞の外面内面どちらにも生じ、外面に生えるものはやや白っぽい感じがするが同種だろう。Lanzia 属菌だと思う。属名はイタリアの植物学者 Matteo Lanzi に由来する。
Zhao (2014) が、コナラ属の落果 ("On fallen fruits of Quercus sp.") から記録した "Lanzia sp.2" に似ているが、子嚢が "arising from simple septa" とされている点は異なる。
科博の標本・資料統合データベースでは、この供試標本(TNS-F-40081:
最終閲覧確認 2025.10.15)のホストは "Fagus crenata" [ブナ] となっているが、Zhao (2014) の図 (Fig. 5.72 A) を見る限り、クヌギかアベマキの総苞のように思われる。
[別図2]
8月31日撮影。側面。
[参考文献]
Zhao (2014): Taxonomic study of Lambertella (Rutstroemiaceae, Helotiales) and allied substratal stroma forming fungi from Japan. (Ph.D. thesis, University of Tsukuba, 2013).
[初掲載日: 2004.09.15, 最終更新日: 2025.10.20] //
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