Linostomella sphaerosperma

Linostomella sphaerosperma

Linostomella sphaerosperma (Fuckel) Petrak
リノストメラ スファエロスペルマ。11月25日撮影。

[特徴]
朽木上に密生し、朽木表面に薄く拡がる共通の黒色の子座から子嚢殻が発達しているように見える。子嚢殻は長い頚のあるフラスコ形、黒褐色、表面は平滑あるいは僅かにざらついてみえる。 子嚢殻本体は球形、径 340-420 μm.、頚部はわずかに屈曲する円筒形で細長く、表面には低い凹凸があり、先端は丸い。ほぼ上下同幅で径 77-85 μm.、長さは 500-780 μm. になる。-- 子嚢は円筒形、薄壁、先端は平たく、僅かに肥厚するが特徴的な構造は認めにくく、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を一列に生じる。成熟した子嚢は遊離して子嚢殻中に充満する。31-35 × 2.2-2.6 μm. -- 明瞭な側糸は観察できなかったが、遊離した子嚢と共に 20 × 7 μm. 程度までの無色薄壁の円筒形の細胞が少数連鎖したものが認められる。-- 子嚢胞子は球形ないし広楕円形、無色、薄壁、平滑、1油球を含む。径 2.0-2.6 μm.

[コメント]
比較的腐朽の進んだコナラ (Quercus serrata) の伐採木の木口面に群生していたもの。成熟した子嚢殻からは子嚢胞子が半透明乳白色の粘液状になって押し出される。 馴染みのない子嚢菌を採集した時は、まず Ellis and Ellis (1997) であたりをつけることにしていて、比較的すんなりと Linostomella sphaerosperma にたどり着いた。 子嚢殻の大きさは約 0.25 mm. とされているが、それ以外の特徴は良く一致するし、Dennis (1971) の図にも良く合うと思う。 一方、L. sphaerosperma を Wallrothiella congregata (Wallr.) Sacc. のシノニムとした Huhndorf et al. (2009) では、 子嚢殻の頚部の長さは 425 μm. まで、とされていて、図示されている子嚢殻の頚部は確かに京都産の菌に比べて短い。 また、Réblová and Seifert (2004) は W. congretaga は乳頭状の孔口を持つ、としている。 頚の部分は環境によって長さが変わる可能性もあるだろうが、長い頚部を持つ京都産の菌に W. congregata を当てることに少し疑問を感じるので、L. sphaerosperma を使っておく。

[別図2] 11月25日撮影。

[参考文献]
Dennis (1971): New or interesting British microfungi. (Kew bulletin ; 25(2), p. 334-374).
Ellis and Ellis (1997): Microfungi on land plants : an identification handbook. Enlarged ed.
Huhndorf et al. (2009): Amplistroma gen. nov. and its relation to Wallrothiella, two genera with globose ascospores and acrodontium-like anamorphs. (Mycologia ; 101(6), p. 914-911).
Réblová and Seifert (2004): Cryptadelphia (Trichosphaeriales), a new genus for holomorphs with Brachysporium anamorphs and clarification of the taxonomic status of Wallrothiella. (Mycologia ; 96(2), p. 343-367).

[初掲載日: 2021.07.16] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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