Mollisia cinerea

Mollisia cinerea

Mollisia cinerea s.lat.
ハイイロクズチャワンタケ。2月14日撮影。

[特徴]
朽木材上に普通は群生する。子嚢盤は椀形からほとんど平らに開き、時に波うつ。径 1.5 mm 程度まで。 子実層面は乳白色ないし灰色、湿時はやや半透明、縁は僅かに内屈し、外面は肉眼では淡褐色、ルーペ下ではざらついて見え、基部に向かって濃色になる。 柄は無く、やや広く基質に固着する。-- 子嚢は円筒形、先端はやや円錐状に肥厚し、頂孔はルゴール試薬で小さな点状に青変する。基部にはかぎ形構造がある。8胞子をほぼ2列に生じる。57-68 × 4.2-5.7 μm. -- 側糸は直線的糸状、基部に隔壁があり、下部で径 1.8-2 μm、先端に向かって僅かに太くなり、先端は丸く、径 2-2.8 μm、一様な無色の内容物がほぼ全長にある。-- 子嚢胞子は細楕円形、時にわずかに左右不対称、無色、薄壁、平滑、顕著は内容物は無いか、小さな油球が両端付近にわずかにある。6.2-11.5 × 2.2-2.8 μm. -- 子実下層は無色、托組織髄層は薄壁の菌糸からなる絡み合い菌糸組織、外皮層は厚さ 80 μm 程度まで、丸みを帯びた褐色でやや厚膜の多角形細胞からなる。 細胞は 10 × 25 μm. 程度まで、外方に向かって小型、濃色、厚膜になり、最外層では径 4-7 μm のほぼ球形細胞となる。縁の細胞はやや棍棒状、7-9 × 2.8-3.5 μm 程度。 外面基部付近からは径 2.5-3.5 μm 程度の淡褐色厚膜の菌糸が基質に向かって伸びる。水酸化カリウム水溶液中で顕著な色素を溶出しない。

[コメント]
様々な樹種の朽木材上に発生する。春に多いが、ほぼ年中見かける。子実層の色調は乾燥時と湿時ではかなり異なる。 Mollisia 属やその近縁属は種類数が多く、互いに特徴が似ている、モノグラフ的な文献が少ない、日本での詳細な報告が少ないなど、素人には歯が立たない。 Mollisia cinerea は広く分布する普通種とされるが、タイプ標本は失われていて正体がよく判らない。Index fungorum 等のデータベースには多くの変種や品種が登録されていて、文献によっても特徴に差がある。 多くの文献で共通する、朽木生、子実層面は灰色、子嚢頂孔はルゴール試薬で青変、子嚢胞子は無隔壁で油球は目立たず長さは平均 10 μm 程度まで、外面の細胞はほぼ全体が褐色で縁の細胞は短い、水酸化カリウム水溶液中で色素を溶出しない、等の特徴を持つものを Mollisia cinerea s. lat. としてまとめ、標本を集めたいと思う。 日本からの記録は大谷 (1966) などがある。大谷が子嚢菌類の解説を担当した「増補改訂新版 日本のきのこ」 (2011) のハイイロクズチャワンタケ (p. 548) で図示されている菌は「原色日本新菌類図鑑 II」や諸外国の図鑑類の M. cinerea とは少し様子が異なる。また、解説の "径 5~15 mm" は明らかに一桁違っている。

[参考文献]
Crossland (1900): Mollisia cinerea and its varieties. (Transactions of the British Mycological Society ; 1(3), p. 106-109).
大谷 (1966): 北海道産 Helotiales 菌 (I). (日本菌学会会報 ; 7(2-3), p. 174-180).

[初掲載日: 2026.03.10] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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