Mollisia sp. no.1
Mollisia sp. no.1
モリシア属菌。5月12日撮影。
[特徴]
初めは丸い椀状、後には平たい椀状から皿状に開き、時にはやや凸形になって縁は僅かに波打つこともある。
直径 0.8-1.5 mm.、子実層面はやや灰色を帯びた乳白色。縁はほぼ全縁、柄は無く中心で基質に固着し、基部周囲に宿主表皮のめくれはほとんど認められない。
外面は殆んど平滑でやや濃色、基部付近は褐色を帯び、スビクルムは認められない。肉質は軟らかい。--
子嚢は棍棒状、先端はやや尖り頂孔はメルツァー液で青変しやや幅広い点状に見える。8胞子をほぼ2列に生じる。40-43 × 4.0-4.6 μm. --
側糸は糸状、ほぼ上下同幅で先端は丸い。基部に隔壁があり、一様な無色の内容物がある。径 2-3 μm. --
子嚢胞子は長卵形でやや左右不対称、無色、薄壁、平滑、目だった内容物は見られない。4.0-5.2 × 1.4-1.7 μm. --
托髄層は無色薄壁の球形細胞が混じる絡み合い菌組織、外皮層は厚さ 50 μm. 程度まで、丸みを帯びた数層の多角形細胞よりなる。
細胞の直径は 15 μm. 程度まで、最外層の細胞はやや褐色を帯び、縁部の細胞は棍棒形から卵形になる。
[コメント]
春から初夏頃、ホオノキ (Magnolia obovata) の落葉の主に裏面主脈と葉柄上にやや群生するが、表面側にも発生する事がある。京都付近ではかなり普通に見られる。
Itagaki et al. (2019) によって報告された Pyrenopeziza protrusa (Berk. & Curt.) Sacc. は、
北米の Magnolia glauca の落葉上から記載された菌だが、日本ではホオノキの葉脈上に発生し分布も広いとされていて、肉眼的にも顕微鏡的にも良く似ていると思う。
原記載も、Hütter (1958) の記載も簡単で特徴を把握し難いが、
原記載では "epidermide hic illic circumdata" (英文では here and there surrounded by the cuticle) となっていて、少し異なるように思う。
ネットで公開されているマイアミ大学ハーバリウムの Peziza protrusa Berk. & Curt. の標本(MU-F-47847, 2020.7.15 閲覧)の画像を見ると、
子実体は葉脈上ではなく、裏面全体に散生している。画像ではわかりにくいが、子実体のまわりには記載にあるように破れてめくれた表皮らしきものも見え、私の採集品とは異なる。
ホオノキの落葉以外にも、様々な落葉に肉眼的には殆んど区別のつかない類似の微小盤菌類が発生する。
[別図2]
5月16日撮影。
[別図3]
5月23日撮影。
[参考文献]
Berkeley and Curtis (1875): Notices of North American fungi. (Grevillea ; 3(28), p. 145-160).
Hütter (1958): Untersuchungen über die Gattung Pyrenopeziza Fuck. (Phytopathologische Zeitzschrift ; 33, p. 1-54).
Itagaki et al. (2019): Two new records of ascomycetes from Japan, Pyrenopeziza protrusa, and P. nervicola (Helotiales, Dermateaceae sensu lato). (Mycoscience ; 60, p. 189-196).
[初掲載日: 2004.06.25, 最終更新日: 2020.07.20] //
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