Octospora sp. no.1
Octospora sp. no.1
オクトスポラ属菌。11月12日撮影。
[特徴]
子実体はコケの生えた地上に散生する。肉厚の皿状ないしクッション形、径 1-2.5 mm.、子実層面は淡オレンジ色、わずかにピンク色を帯び、
平滑またはややざらついて見える。
縁は白っぽく、僅かに盛り上がって襟状になり外側は不明瞭な低い鋸歯状になる。外面はわずかに淡色、無毛。柄は無く、やや広く基質に固着する。--
子嚢は円筒形、薄壁、有蓋、基部にはかぎ形構造があり、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子をほぼ一列に生じる。185-217 × 14-17 μm. --
側糸は糸状、隔壁があり、径 3-4 μm.、先端細胞は次第に膨らんで径 5.0-7.2 μm. になり、少し折れ曲がるものが多く、少量の油球と細かいオレンジ色の顆粒状内容物がある。--
子嚢胞子は広楕円形、無色、薄壁、平滑、中央に1個(まれに2個)の大きな油球(径 8-8.5 μm.、ただし1個の場合)を含む。16.3-17.2 × 10.2-11.2 μm. --
托組織髄層は無色薄壁で径 5.5-14.5 μm. のソーセージ形やアメーバ状の細胞からなる絡み合い菌糸組織で外皮層との境界は不明瞭。
外皮層は厚さ 100-140 μm. 程度、球形ないし丸みを帯びた多角形細胞からなる。細胞は径 17-50 μm. 程度、やや厚膜でゼラチン化しているように見える部分もある。
縁部の細胞は棍棒形ないし円筒形、先端は僅かに膨らんで丸く、42-70 × 8-20 μm.、やや房状に生じる。
子実体下面基部付近からは無色の毛状菌糸がまばらに伸びる。薄壁で隔壁があり先端は丸く、径 5-6 μm. 程度。
[コメント]
まばらにコケの生えたやや粘土質の裸地に散生していたもの。
コケ類についてはほとんど知識がなく、胞子体も見つけられなかったので寄主の名前は分からないが、複数種が混生しているようだ。
ヨーロッパや北米では蘚類に生じるオクトスポラ属菌が数多く知られていて普通種も多いのだが日本では記録が見当たらない。
いくつかの文献を当たってみたが種名は判然としない。O. rubens や O. rustica が近いように思う。
[別図2]
11月12日撮影。
[参考文献]
Caillet and Moyne (1987): Contribution a l'etude du genre Octospora Hedw. ex S.F. Gray (Pezizales). (Bull. Soc. mycol. Fr. ; 103(3), p. 179-226).
Caillet and Moyne (1988): Clé de détermination du genre Octospora et des genres voisins. (Bull. Soc. Hist. nat. Doubs ; 84, p. 9-24).
Dennis and Itzerott (1973): Octospora and Inermisia in Western Europe. (Kew bulletin ; 28(1), p. 5-23).
[初掲載日: 2016.12.08]