"Ombrophila fagiseda"
"Ombrophila fagiseda Baral", nom. prov.
"オンブロフィラ ファギセダ"。9月15日撮影。
[特徴]
ブナの殻斗上にやや群生する。子嚢盤は倒円錐形から洋ゴマ形、後に上面は凸形になり、径 2-5 mm. 程度。全体が柔らかいゼラチン質。
子実層面は平滑、初めは半透明乳白色、後には淡桃色ないし淡ライラック色、縁は全縁、外面は同色、平滑。柄は太くて短く、ほぼ平滑、やや粘性がある。--
子嚢は棍棒形、薄壁、先端は肥厚して頂孔はメルツァー試薬で青変する。基部にはかぎ形構造がある。8胞子を一列に生じる。91-100 × 6.5-7.2 μm. --
側糸は糸状、ほぼ上下同幅、隔壁があり、上半には無色で一様な内容物がある。径 1.5-2.0 μm. --
子嚢胞子は楕円形ないし広紡錘形で一端がわずかに太く、無色、薄壁、平滑、両極付近に少数の油球がある。11.4-14.2 × 5.4-6.0 μm. --
托組織髄層はゼラチン質に包まれた径 2-3 μm. の無色薄壁の菌糸からなる疎な絡み合い菌組織、
外皮層は2層に分かれ、内層は厚さ 250 μm. まで、無色薄壁の楕円あるいは丸みを帯びた矩形状の径 70 × 25 μm. までの細胞からなり、ゼラチン質ではない。
外層はゼラチン質に包まれたやや平行に走る径 2-3 μm. の無色薄壁の菌糸からなり、子実体下半で厚く、上半では次第に薄くなり、縁付近ではほとんど見られない。
先端細胞は径 6 μm. までに膨らんで細棍棒状ないし紡錘状、一様な無色の内容物を含むものが多い。
[コメント]
ブナ (Fagus crenata) の殻斗に生じ、特に半ば地中に埋もれた古い殻斗に多い。堅果から発生しているものはまだ見たことが無い。
子嚢胞子が文献にある数値より若干幅広いが、いくつかのサイトで Ombrophila fagiseda の名前で紹介されているものだと思う。まだ正式発表はされていないようだ。
托外皮層がゼラチン質に包まれる外層と非ゼラチン質の内層からなるのは一般に Neobulgaria 属の特徴とされるが、Ombrophila 属のシノニムと考える意見もある。
最近の遺伝子解析によれば別属とするのが妥当なようだ。
[別図2]
9月15日撮影。幼菌はほぼ白色で柄は半透明。
[参考文献]
Baral (1990, unpublished): Key to the collected European Helotiales species based on vital characters.
[初掲載日: 2021.11.12] //
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