Peziza sp. no.21

Peziza sp. no.21

Peziza sp. no.21
チャワンタケ属菌。1月7日撮影。

[特徴]
子実体は地上生、単生あるいは少数が群生する。椀状から皿状に開き直径 2-3 cm.、子実層面は平滑、黄褐色。 縁は幼時は内屈し粗く低い鋸歯状、後に展開して反り返り、鋸歯は目立たなくなる。 外面は白っぽく、細かい糠状、まばらにやや濃色の粒状鱗片をつける。ほぼ無柄。肉質は脆く、変色性はない。 子嚢は円筒形、先端には蓋があり周囲はメルツァー試薬で青変し、基部にはかぎ形構造がある。8胞子を一列に生じる。250-300 × 10.8-14.2 μm. -- 側糸は糸状、無色、隔壁があり径 3.0-4.3 μm.、先端は棍棒状に膨らんで 5-6.8 μm. 程度になり、内容物は無色あるいは僅かに黄色味を帯びる。下半の細胞は膨らんで数珠状になり、径 11 μm. までになる。-- 子嚢胞子は楕円形、無色、平滑(わずかにちりめん状の粗面に見えるものがあるが、コットンブルーでは明瞭に染色されない)、 顕著な内容物は認められない。13.7-15.8 × 8.6-10.0 μm. -- 托組織は顕著な層構造をなす。子実下層は密な絡み合い菌組織。 次に径 20-55 μm. 程度の球状細胞と、その間をソーセージ形細胞が埋める層がある。 次にやや平行に走る径 4-9 μm. までの膨らんだ菌糸よりなる絡み合い菌組織の層がある。この細胞の隔壁部付近には黄褐色の物質が輪状に付着する事がある。上下の球状細胞層との境界はやや不明瞭。 次に径 40-60 μm. 程度、無色で球状ないしやや角ばった細胞からなる層がある。 表面に近づくにつれ、細胞は小さく多角形状になって淡黄褐色を帯び、最外層からは径 4-6 μm. 程度の短いミミズ状の細胞が絡み合って立ち上がる。

[コメント]
厳寒期、アラカシ林や植林されたヒノキが混じる雑木林内の地上に生じる。 Peziza micropus や P. varia 等と酷似していて肉眼的にはほとんど区別できず、顕微鏡的特徴も大きな違いは見られないので、これらのチャワンタケ類が季節外れに発生したものかもしれない。 ただ、数か所で何回か冬期に採集しているこのチャワンタケは、すべて地上生で子嚢胞子がやや小型という特徴が一致しているので、別種ではないかと考えている。 融雪の間から発生する P. nivalis など、低温期に発生するチャワンタケ属菌があるが、それらとも特徴が異なるようだ。

[参考文献]
Donadini (1980): Le genre Peziza. IV. Les pezizes nivales. (Bull. Soc. Mycol. Fr. ; 96(3). p. 247-248).

[初掲載日: 2019.05.24] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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