Peziza varia
Peziza varia (Hedw.) Fr.
チャワンタケ属菌。5月1日撮影。
[特徴]
腐食質の多い地上や、積み藁、古畳などに群生する。
子実体は椀状から皿状に開き、更には一部反転するが群生している場合は互いに押しつぶされて歪む事が多い。
普通は直径 2-6 cm.、大きい物では 10 cm. に達する。
子実層面は平滑あるいは中央付近に放射状の皺があり、黄褐色から茶褐色。縁は浅く裂けて粗い鋸歯状になり、やや濃色になるものが多い。
外面はフケ状で殆んど同色、あるいは白い粉状。柄は殆んど無いか、短い柄が中央にある。肉は薄く、水っぽい感じで脆い。--
子嚢は円筒形、先端には蓋がありメルツァー液でリング状に青変する。8胞子を一列に生じる。250-290 × 13.0-15.8 μm. --
側糸は幼時は糸状、ほぼ無色、隔壁があり先端はやや丸く膨らんで 8 μm. 程度になり、ややかぎ状に曲がるものが多い。
成熟するにつれ中央部の細胞は棍棒状ないし楕円形に膨らんで、径 30 μm. までになり、全体で数珠状になる(普通は先端細胞は膨大化しない)。--
子嚢胞子は楕円形、無色平滑で顕著な内容物はない。14.8-17.2 × 8.8-10.2 μm. --
托組織には層構造が認められる。子実下層は密な絡み合い菌組織。
次に円形菌糸組織の層がある。球形細胞は最大で径 90 μm. になり無色薄壁。球形細胞の間にはソーセージ形の菌糸が走る。
次(托断面の中央よりやや外側)にやや平行に走る径 15 μm. までの菌糸よりなる絡み合い菌組織の層がある。周辺組織との境界はやや不明瞭で厚さ 60-140 μm.。
次に円形菌糸組織の層がある。細胞は無色薄壁でやや角ばる。細胞の長径は最大 80 μm. に及ぶものがある。
外皮層はやや黄褐色を帯びる径 8-25 μm. 程度の球形あるいはやや多角形の細胞からなり、厚さ 100 μm. 程度まで。
表面には隔壁のある短いミミズ状の細胞が絡まって立ち上がり時に房状になる。
[コメント]
堆肥などの腐食質の多い場所に群生するが、古畳に発生しているのを良く見る。
乾燥している環境では外面は白く厚い粉状になる事が多いようだ(ミミズ状の細胞の層が厚く密になる)。
Peziza micropus, Peziza cerea 等の近似種があって区別が難しく、これらを同一種とする論文もあるが、
側糸の中央部の細胞が数珠状に膨大するものを Peziza varia としておく。
[別図2]
5月10日撮影。古畳の縁に群生していた物。
[参考文献]
Hansen, Læssøe and Pfister (2002): Phylogenetic diversity in the core group of Peziza inferred from ITS sequences and morphology. (Mycological research ; 106(8), p. 879-902).
[初掲載日: 2004.08.29, 最終更新日: 2012.05.18]