Phyllachora bonariensis Speg.
フィラコラ ボナリエンシス。12月29日撮影。
[特徴]
葉に発生する。つやのある黒色粒状の子座は葉肉中に発達して葉の両面に盛り上がる。葉脈に沿って並び、短い線状になることが多い。子座中に一個あるいは少数の子嚢殻を生じる。
子嚢殻は扁球形、黒色、200-250 × 190-200 μm.、殻壁は厚く、孔口は普通は葉の表側に開くが殆んど突出せず、目立たない。--
子嚢は棍棒形、短柄があり、やや厚膜、頂孔は僅かに盲管状で目立たず、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子をほぼ一列、あるいは部分的に2列に生じる。74-92 × 11.5-17.2 μm. --
側糸は長い鞭状、無色、薄壁、分岐と隔壁があり、基部付近で径 4 μm.、先端付近で 1 μm. 程度。--
子嚢胞子は広楕円形、無色だが後にわずかに褐色を帯びて見えるものがあり、薄壁、平滑、内容は泡状、13.0-15.2 × 8.0-8.7 μm.
[コメント]
チヂミザサ (Oplismenus undulatifolius) に発生する。日本産菌類集覧には、チヂミザサを寄主とする Phyllachora 属菌として P. arthraxonis Henn. が挙げられている。
P. arthraxonis は、高知県でコブナグサ (Anthraxon hispidus) から記録された種だが、寄主は後に訂正されている。
その訂正(吉永虎馬、土佐國所産菌類寄主植物ノ數種ニ就キテ. 植物学雑誌25巻299号, p.491. 1911)は下記の通り。
土佐國十市村産(一九〇三年九月) Arthraxon ciliare P.B. ヲ寄主トセルモ當時採収セル標本極メテ不完全ニシテ或ハ
Oplismen Burmanni Beauv. ヲ誤リシ嫌アリ果シテ然ラバ本種モ又 Ph. Oplismenus Syd. ト同種ニシテ本種名ハ當然除キ去ラルベキモノナラン [学名は原文のまま]
寄主とされた Oplismenus burmanni は現在はチヂミザサとは別種とされているようだが、日本産菌類集覧 (勝本, 2010) は、これをチヂミザサへの訂正、としている。
但し、"誤リシ嫌アリ" とあるので、同定にはやや疑問を残していると思う。
Parbery (1967) は、検討した P. arthraxonis のタイプ標本を "On Arthraxon hispidus" として独立種と認め、
台湾の Arthraxon hispidis [sic] v. typicus から記載された P. arthraxon-hispidi Sawada をシノニムとしている。
P. oplismeni はやはり日本のチヂミザサから記録された種だが、日本産菌類集覧では P. arthraxonis の、Parbery (1967) では P. bonariensis のシノニムとされている。
この両者の関係について、勝本は植物病原菌類図説 (p. 582) で「調査を要する」と記している。
植物病原菌類図説には他にチヂミザサを寄主とする種として P. punctum (Schw.) Orton も挙げられているが、確実な典拠を捜し出すことができていない。
どの種も、形態的特徴の差は微妙だと思う。Phyllachora 属菌は黒やに病菌、あるいは黒ごま病菌と呼ばれ、多くの種がイネ科植物から記録されているが、シノニムとされる種も多い。
ここでは Parbery (1967) に従って上記の学名をあてておく。
[別図2]
12月19日撮影。裏面側。
[参考文献]
Parbery (1967): Studies on graminicolous species of Phyllachora Nke. in Fckl. V. A taxonomic monograph. (Australian journal of botany ; 15(2), p. 271-375).
[初掲載日: 2022.03.21] //
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