Phyllosticta ampelicida
Phyllosticta ampelicida (Engelmann) Aa
ツタ褐色円斑病菌。5月15日撮影。
[特徴]
葉に分生子殻を生じる。
病斑はやや角ばった不整円形など、径数ミリ程度、散生あるいは融合して拡がり、淡褐色、周辺は暗褐色に縁どられる。病斑内に黒色粒状の分生子殻がやや環状に散生する。--
分生子殻は寄主組織中に埋生し、黒色、やや扁平な球形、径 100-170 μm.、高さ 60-100 μm. 程度、表面は径 4-10 μm. 程度の黒褐色の多角形細胞からなる。
頂部に孔口があり、葉の表面側に開く。孔口はほとんど突出せず、径 10-12 μm. 程度。--
分生子は球形ないし広楕円形から卵形、ほとんど無色、薄壁、平滑、内容物は泡状で、時に大きな一油球が目立つ。一端に細い尾状の付属糸があるが、かなり不明瞭。
全体が粘質の被膜で覆われ、孔口から押し出された分生子は塊状になる。8.5-10.4 × 5.6-7.4 μm.
[コメント]
ツタ (Parthenocissus tricuspidata) に生じ、市街地でも人家の塀等に絡まるツタに普通に発生している。文献では分生子の基部は截断状とあるが、確認しづらい。
完全世代は Guignardia bidwellii (Ellis) Viala & Ravaz とされ、海外ではブドウ黒腐病として良く知られているが、
国内では粕山・井上 (2008) による完全世代の報告があるものの、ツタ上の菌のブドウへの病原性は弱い(あるいは確認できない)とされ、
「日本植物病名目録」(2023.8) では "病原菌の分類学的所属は検討を要する" とされている。
[参考文献]
Aa (1973): Studies in Phyllosticta I. (Studies in mycology ; 5, p. 1-110).
粕山・井上 (2008): Guignardia bidwellii によるブドウ黒腐病. (岡山県農業総合センター農業試験場研究報告 ; 26, p. 47-50).
本橋 (2011): 日本産 Phyllosticta 属菌の分類学的再検討と系統関係. (日本菌学会報 ; 52, p. 1-10).
[初掲載日: 2024.06.03] //
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