Piceomphale pinicola

Piceomphale pinicola

Piceomphale pinicola (Otani) Zhao & Hosoya = Moellerodiscus pinicola Otani
マツバチャワンタケ。6月13日撮影。

[特徴]
マツの落葉に発生する。子嚢盤は幼時短い筒状、後に先端が膨らんで椀形になり、さらに盤状に開いて径 3 mm. まで。子実層面は平滑、ベージュ色から後にはややオリーブ色を帯びた褐色になる。 縁はほぼ全縁、細かい茶褐色の鱗片で縁どられる。外面は白っぽく、ほとんど平滑でルーペ下では微粉状に見える。柄は比較的短く、外面と同色、下半から基部にかけてはやや黒ずむ。-- 子嚢は円筒形、先端は肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で青変する。基部のかぎ形構造は認めにくい。8胞子を初め一列、後にはほぼ2列に生じる。74-86 × 6.8-7.5 μm. -- 側糸は糸状、基部付近で分岐し、隔壁がある。1.5-2.5 μm.、先端にかけて僅かに太くなる。内容はほぼ一様で無色、メルツァー試薬で赤褐色になる。-- 子嚢胞子は楕円形で僅かに左右不対称、無色、薄壁、平滑、顕著な内容物は見られない。8.5-10.3 × 3.3-4.0 μm. -- 子実下層は厚さ 30 μm. 程度で淡緑褐色、托組織髄層はほぼ無色、径 3-6 μm. の隔壁のある菌糸からなる絡み合い菌糸組織で、菌糸の表面には細かい顆粒が付着する。 外皮層は厚さ 60-80 μm. 程度、径 10-30 μm. の丸みを帯びた細胞からなる。 最外層の細胞はやや厚膜で僅かにゼラチン化しているように見える。縁付近の細胞は円筒形状、淡褐色で先端は僅かに立ち上がり、時に短い房状になる。

[コメント]
春から初夏にかけて、マツ(京都ではアカマツ、Pinus densiflora)の落葉に発生する。子嚢盤は表皮下の子座様組織から発生しているように見えるが、明瞭な子座を確認できなかった。 Otani (1979) は、タイプ産地のつくば市などではかなり普通 "quite common" と記していて、韓国からの報告もあるが、京都では比較的出会う機会が少ない種だと思う。 最近 Zhao et al. (2016) が分子系統解析に基づいて Piceomphale 属に移している。なお、Otani (1979) の原記載では Moellerodiscus pinicolus と綴られているが、 -cola で終わる形容語は名詞であり、属名の性(Moellerodiscus は男性名詞)に合わせて -colus とは変化しない。 形容詞としての -cola の使用は訂正可能な誤り (ICN Shenzhen Code 23.5) とされている。

[参考文献]
Otani (1979): Notes on some interesting cup-fungi in Tsukuba Academic New Town. (Bull. Natn. Sci. Mus., Ser. B. (Botany) ; 5(2), p. 51-60 + 1 plate).
Park et al. (2020): First reports of five endophytic fungi isolated from leaves of plants inhabiting the Hansando Island in Korea. (Korean journal of mycology ; 48(3), p. 217-228).
Zhao et al. (2016): Taxonomic re-evaluation of the genus Lambertella (Rutstroemiaceae, Helotiales) and allied stroma-forming fungi. (Mycological progress ; 15, p. 1215-1228).

[初掲載日: 2021.03.05] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2021.