Pseudoboubovia sp. no.1

Pseudoboubovia sp. no.1.
プセウドブボヴィア属菌。6月30日撮影。
[特徴]
地上や落葉などの腐植質上に群生する。子嚢盤は初めは半球形椀状、後に浅い皿状ないし平板状からやや凸型に開き、径 3-6 mm. 程度。
子実層面はクリーム色、淡い黄色あるいは淡レモン色、縁は全縁で、外面はやや淡色で無毛、柄は無く、やや広く基質に固着し、基部付近にはわずかに綿状の白色菌糸が拡がる事がある。
肉質は柔らかく、乳液や変色性は観察できない。--
子嚢は円筒形、先端は有蓋、ルゴール試薬に呈色せず、基部は細長く伸び、かぎ状構造は見られない。8胞子を一列に生じる。188-242 × 10.8-12.9 μm. --
側糸は糸状でほとんど無色、隔壁があり径 2.0 μm. 程度。先端付近は僅かに膨らんで径 4 μm. 程になり先が丸く曲がるものが多い。--
子嚢胞子は楕円形ないし広紡錘形、無色、やや厚膜、平滑。細かい泡状の内容物を含み、de Bary babble は認められない。14.6-17.4 × 8.0-9.2 μm. --
托髄層はやや太めの菌糸よりなる絡み合い菌糸組織、托外被層は無色で薄壁、径 20 μm. 程度までの球形の細胞層よりなる。
基部付近の最外層の細胞からは毛状の菌糸が伸びることがある。薄壁で先端は丸く、径 3-4 μm.、隔壁があり、長さは 200 μm. に達する。
托組織の細胞は細かい無色の油球を多く含み、水でマウントすると大量に拡散する。
[コメント]
夏から秋期、スギやヒノキ等の針葉樹の落葉、腐朽材上や、それらの腐植質が混じる地上に群生することが多い。
Pyronemataceae には間違いないと思うがこの科の属の概念がよく理解できてないのでなかなか先に進めない。先端の曲がる側糸や肉眼的な特徴は Pulvinula 属に似ている。
Pulvinula 属の子嚢胞子は基本的には球形だが、子嚢胞子が楕円形の種がいくつかあり、Pulvinula ascoboloides Korf & Zhuang は特徴がよく似ている。
ただし、この種の子嚢胞子が持つとされるコットンブルー染色性の被膜は観察できない。
P. ascoboloides は、Yao and Spooner によって Boubovia 属に移されているが、その Boubovia 属にも B. ascoboloides 以上によく一致する種は見当たらない。
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最近記載された Kotlabaea benkertii Perić は、特徴が良く一致すると思う。K. benkertii は 針葉樹林内等に発生するというから、発生環境もよく似ている。[2014.07.15 追記]
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掲載当初は所属不明の盤菌類 (no.5) とし、後に Kotlabaea benkertii に似ている菌、としていたもの。
Kotlabaea 属は、Lindemann et al. (2015) によって見直され、K. benkertii は新属 Pseudoboubovia benkertii (Perić) U. Lindemann & al. に移されている。
当サイトを見た Lindemann から、日本の標本を送ってほしいとの連絡があったので標本を送付したところ、
日本の菌は P. benkertii に大変似ているが遺伝子的には明らかに異なり、Pseudoboubovia 属の別種である、との私信をいただいたので Pseudoboubovia の未記載種に修正する。
海外のサイトの画像と見比べる限りでは、P. benkertii より子実層の色が僅かに淡いようだが、肉眼的にも顕微鏡的にも区別はかなり難しいと思う。[2025.05.05 追記]
[別図2]
ヒノキ植林地内。6月22日撮影。
[別図3]
スギ樹下近くの腐植上に生じたもの。7月3日撮影。
[参考文献]
Korf and Zhuang (1984): The ellipsoid-spored species of Pulvinula (Pezizales). (Mycotaxon ; 20(2), p. 607-616).
Lindemann et al. (2015): Revision der Gattung Kotlabaea: K. deformis, K. delectans und K. benkertii. (Zeitschrift für Mykologie ; 81(2), p. 373-402).
Perić (2012): Une espèce nouvelle du genre Kotlabaea (Pezizales), K. benkertii sp. nov. (Mycologia Montenegrina ; 15, p. 15-30).
Yao and Spooner (1996): Delimitation of Boubovia and Pulvinula. (Mycological research ; 100(2), p. 193-194).
[初掲載日: 2005.03.07, 最終更新日: 2025.05.05] //
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