Pycnopeziza pachyderma

Pycnopeziza pachyderma

Pycnopeziza pachyderma (Rehm) White & Whetzel
ピクノペジザ パチデルマ。4月13日撮影。

[特徴]
子嚢盤は平盤状、子実層面は平滑でくすんだクリーム色ないし象牙色。径 2-4 mm.、縁は全縁だが小さく切れ込みが入る事が多い。 外面はほぼ同色でわずかに粉状、基部にかけて黒褐色のかさぶた状鱗片が多い。柄は短いかほとんど無く、黒色。基部周辺の落葉は黒変するが境界は不明瞭。-- 子嚢は円筒形、先端は肥厚し、頂孔はメルツァー液で青変する。基部にはかぎ形構造がある。8胞子を一列に生じるが後にはやや不規則な2列になる。80-88.6 × 5.7-6.3 μm. -- 側糸は糸状、ほぼ上下同幅、下半に少数の隔壁があり内容は無色で一様。径 2.5-3.0 μm. -- 子嚢胞子は楕円形あるいは卵形。無色、薄壁、平滑、顕著な内容物は見られない。8.2-11.6 × 3.4-4.3 μm. -- 托組織髄層は絡み合い菌組織、径 3 μm. 程度の無色の菌糸よりなる。 外被層は厚さ 60 μm. 程度の球形菌組織で、直径 12 μm. 程度までの無色薄壁の細胞よりなり、表面では所々房状に盛り上がる。 基部付近の最外層の細胞は厚膜で黒褐色になる。-- 子嚢盤の近くには同時に分生子果が見られることが多い。主に葉脈上に生じ、表在性、直径 1-2 mm. までになる饅頭形で葉脈方向にやや長いものが多い。 薄膜状の殻皮に被われ、表面は平滑で濃茶褐色、径 4.2-10 μm. の丸みを帯びたやや厚膜の多角形細胞からなる。 成熟すると殻皮上面が不規則に裂開して淡黄色の内部が露出し、後には裂片となって反り返る。 内部は軟らかい餡状で密に並んだ菌糸からなる。菌糸は直径 2.5 μm. 程度、無色で隔壁があり、叉状分岐を繰り返し、先端はやや膨らむ。 先端から分節して分生子が形成される。-- 分生子は棒状、無色、薄壁、平滑、両端はやや丸みを帯び、時にわずかに膨らむ事がある。中央に隔壁があり2細胞。12.8-22.9 × 2.2-3.0 μm.

[コメント]
主にコナラ (Quercus serrata) の前年度の落葉や雄花序に発生する。共に発生するアナモルフ (Acarosporium quisquiliaris) の分生子果は White and Whetzel (1938) では pycnidium = 分生子殻とあるが植物病原菌などでよく見られる分生子殻 (球形で頂孔があり中空の内部が分生子で満たされる)とはちょっと様子が変わっていて、裂開したものは分生子褥のように見える。 子嚢盤の特徴も分生子果の特徴も White and Whetzel の P. quisquiliaris (= P. pachyderma) の特徴によく一致するのだが、 ただ一点、分生子果の内容物が pinkish と書かれているのが気になる。 観察した限り裂開直後は明るい黄色で後にくすんだ色になるが赤みを帯びる事はない。Schumacher and Horst-Jensen によって図示されている P. pachyderma の分生子果(2008年4月20日閲覧確認、2022年5月1日現在リンク切れ)の内容物は黄色く見える。

[別図2] 4月27日撮影。子嚢盤は花柄や葉柄に発生することが多い。
[別図3] 4月27日撮影。子嚢盤裏面。
[別図4] 4月13日撮影。裂開した分生子果。分生子果は葉上に発生することが多い。
[別図5] 4月27日撮影。同上。

[参考文献]
Dennis (1981): British Ascomycetes. Revised ed., Second impression, with supplement.
Whetzel and White (1940): Mollisia tetrica, Peziza sejournei, and the genera Phaeociboria and Pycnopeziza. (Mycologia ; 32, p. 609-620).
White and Whetzel (1938): Pleomorphic life cycles in a new genus of the Helotiaceae. (Mycologia ; 30, p. 187-203).

[初掲載日: 2008.04.24, 最終更新日: 2022.05.02] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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