Pyrenopeziza nervicola
Pyrenopeziza nervicola (Desmazières) Boudier
ピレノペジザ ネルヴィコラ。5月31日撮影。
[特徴]
落葉裏面に散生ないし群生する。子嚢盤は浅い椀状から殆んど平盤状、直径 0.3-0.8 mm.、子実層面は平滑で半透明乳白色からやや灰色ないしベージュ色を帯びる。
縁は全縁で薄く、外面は平滑でほぼ同色あるいは基部に向ってやや褐色を帯びる。柄は殆んど無く、中心で基質に固着する。
子実体は表皮下から生じるが、子実体基部に表皮のめくれはほとんど認められない。--
子嚢は円筒形、先端はやや尖って肥厚し、頂孔はメルツァー液で青変し、基部にはかぎ型構造がある。8胞子を2列に生じる。34-40 × 4.8-5.7 μm. --
側糸は糸状、一様な無色の内容物があり、下端以外には隔壁は認められない。径 1.5 μm. 程度。先端はやや棍棒形に膨らんで 3.5 μm. までになる。--
子嚢胞子は長楕円形で先端は丸く、末端はやや細く伸び、無色、薄壁、平滑。顕著な内容物は無い。7.0-9.2 × 1.8-2.4 μm. --
托外皮層は厚さ 40 μm. 程度まで、やや角ばった球形ないし亜球形の細胞よりなる。径 4.0-15 μm.、薄壁でほぼ無色だが、外半の細胞はやや厚膜で淡褐色を帯び、一様な内容物を含む。
縁付近の細胞は 12 × 6-8 μm. 程度の棍棒形に伸びてやや房状になる。
[コメント]
コナラ (Quercus serrata) の落葉に発生していたもの。春から初夏にかけてコナラ林では普通で、また、ブナ (Fagus crenata) の落葉上にも発生する。
その他、同定不能な落葉(少なくともコナラでもブナでもない)にも同種と思われる菌が発生する。
当初、モリシア属の不明菌 (Mollisia sp. no.6) として掲載していたが、Itagaki et al. (2019) でコナラの落葉から報告された Pyrenopeziza nervicola (Desm.) Boud. だと思う。
P. nervicola (= Mollisia nervicola (Desm.) Gillet) を記述した文献をいくつか調べて見ると、
縁部の細胞を Hütter (1958) は 30-35 × 6-9 μm.、Van Vooren (2010) は長さ 20-32 μm. としていて、私の採集品とは少し異なるようだが、
明確な区別点を認められず、Itagaki et al. (2019) は寄主としてコナラの他にブナ、クマシデ属 (Carpinus sp.)、オオバボダイジュを挙げているので、
主にブナ科の落葉に生じるものを P. nervicola の学名で整理しておく。
文献やネット上で Mollisia nervicola、あるいはシノニムとされる Mollisia rabenhorstii 等として解説や図示されている菌のなかには同一種とは思えないものもあるので、
一部学名の混乱があるのかもしれないし、近似の別種もあると思う。
[別図2]
5月3日撮影。コナラの落葉では裏面に発生する。
[別図3]
4月16日撮影。ブナの落葉の表面に発生したもの。裏面に発生したものは未見。子実体はわずかに大型でほぼ白色。
子嚢胞子は 5.7-6.3 × 1.4-1.6 μm. で、コナラ上のものに比べてやや小型だった。
[参考文献]
Hütter (1958): Untersuchungen über die Gattung Pyrenopeziza Fuck. (Phytopathologische Zeitschrift ; 33, p. 1-54).
Itagaki et al. (2019): Two new records of ascomycetes from Japan, Pyrenopeziza protrusa and P. nervicola (Helotiales, Dermateaceae sensu lato). (Mycoscience ; 60, p. 189-196).
Van Vooren (2010): Sur querques Mollisia récoltés à la session Ascomycètes en mai 2010. (Ascomycete.org ; 2(2), p. 21-24).
[初掲載日: 2010.07.21, 最終更新日: 2024.05.30] //
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