Rhytidhysteron sp. no.1
Rhytidhysteron sp. no.1
リティドヒステロン属菌。2月16日撮影。
[特徴]
子実体は枯死した枝の樹皮下から樹皮を破って生じ、散生ないしやや群生する。
初めは閉じた唇状で長径 1-2 mm. 程度、両端はやや尖り、肉厚、外面は黒色、つやは無く、乾燥時には縦に低い畝状の隆起と亀裂がある。太く短い柄がある。全体に比較的硬い。
成熟した子実体は、湿ると幅 1-1.5 mm. 程度に開いて広紡錘形の不整盤状になり子実層面が現れる。子実層面はややざらついた感じでさび褐色。縁は盛り上がって内屈し、外面は殆んど平滑になる。--
子嚢は円筒形、厚膜(二重膜)でメルツァー試薬に呈色しない。基部はやや細くなり、8胞子(4、6胞子の子嚢も比較的多い)を一列に生じる。180-190 × 9.8-11.5 μm. --
偽側糸は糸状、無色、隔壁があり径 1-1.5 μm. 程度。上半の細胞はやや太く、先端細胞は紡錘形ないし楕円形で、径 3.4-4.5 μm. になる。
子嚢より僅かに長く伸びて子実上層となり、全体が無色のゼラチン質様の物質に包まれ、子実層上半はメルツァー液で青変する。外面には褐色不定形のヤニ状物質が付着する。--
子嚢胞子は類細卵形、初めは無色のち褐色、厚膜、平滑。ほぼ中央に隔壁があり2細胞、隔壁部は括れる。上半の細胞は太く、先端は時に乳頭状に僅かに突出する。
上半、下半の細胞共に時に隔壁を生じ、全体で3ないし4細胞となるが、上半の細胞に隔壁が生じる事は稀。19.5-23.5 × 8-10 μm. --
托組織外層は径 5-8 μm. 程度の黒褐色厚膜の多角形細胞からなる。
[コメント]
カラタチ (Citrus trifoliata) の立ち枯れた枝に発生していたもの。Rhytidhysteron 属菌には間違いないと思う。
Rhytidhisteron rufulum の寄主として Citrus 属が記録されているが、肉眼的にも顕微鏡的にも異なり、幾つかの文献で検索表を当たってみても該当しそうな種が見当たらない。
ミカン類に発生する類似菌を調べていて、内藤喬(1891-1957、鹿児島高等農林学校、鹿児島大学文理学部教授)が記載した Hysterium citricolum という種が少し気になった。
Naito (1933) で鹿児島県のユズ上から記載されたこの菌は Rhytidhysteron 属の菌のように思われるが、子嚢胞子がほぼ等幅で 25-31 × 9-10 μm. とあるので、これも別種だろう。
内藤の論文では H. citricolum の他に H. photiniae も新種記載されているが、両種とも Mycobank、Index Fungorum のどちらにも登録されていないようだ [2023.02.20 閲覧確認]。
この論文の掲載誌 「鹿兒島高等農林學校博物同志會會報」 は収録対象外なのだろうか。
H. citricolum の種形容語は citricola と修正可能な誤りのはずだが、内藤の学名が有効なら、H. citricola Tilak & R. Rao (1966) に先行する。
[別図2]
2月16日撮影。乾燥状態の子実体。
[参考文献]
Cobos-Villagrán et al. (2021): Three new species of Rhytidhysteron (Dothideomycetes, Ascomycota) from Mexico. (MycoKeys ; 83, p. 123-144).
Du et al. (2023): Additions to Rhytidhysteron (Hysteriales, Dothideomycetes) in China. (Journal of fungi ; 9, 148).
Naito (1933): The mycoflora of southern Kiusiu II. (Transactions of the Natural History Society of the Kagoshima Imperial College of Agriculture & Forestry ; 3(12), p. 3-5).
Soto-Medina and Lücking (2017): A new species of Rhytidhysteron (Ascomycota: Patellariaceae) from Colombia, with a provisional working key to known species in the world. (Revista de la Academia Colombiana de Ciencias Exactas, Físicas y Naturales ; 41(158), p. 59-63).
[初掲載日: 2023.03.01] //
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