Rhytisma japonicum
Rhytisma japonicum C.L. Hou, S. Wang & P.F. Cannon
リティスマ ヤポニクム。5月5日撮影。
[特徴]
子座は夏から秋にかけて、カエデ類の葉表面に黒色のかさぶた状斑点となって発達し直径 1-2 mm. 程度の類円形の子嚢盤が数個ないし10個程度群生し、
次第に融合して径 1 cm. 程度までの不整円形に広がる。越冬後、地上の落葉上で成熟し子嚢盤を形成する。子嚢盤は子座中でややドーナツ状に配置するものが多い。
成熟した子嚢盤は湿ると黒い殻皮が不規則に裂開してめくれあがり、子実層が現れる。子実層面は平滑、灰色で僅かにピンク色を帯びる事もある。--
子嚢は棍棒形で基部は長く伸びる。先端は僅かに肥厚し頂孔はメルツァー試薬に呈色しない。8胞子を束状に生じる。120-160 × 10.0-12.3 μm. --
側糸は糸状で無色、隔壁がある。子嚢よりやや長く、基部で径 3.0 μm. 程度、先に行くに従い次第に細くなり 1 μm. 程度になり屈曲するが、
先端はやや丸く膨らんで 2.0 μm. までになるものが多い。時に先端近くで分岐するものがある。--
子嚢胞子は弓形で先端側は丸く、末端側はやや細く尖る。無色、薄壁、平滑、全体に薄い被膜がある。
内容物は細かい泡状か、数個のやや大きい油球状の内容物を含む。28.2-32.0 × 2.5-3.2 μm.(長径は両端の弦を計測)
[コメント]
イロハモミジ (Acer palmatum) の落葉に発生していたもの。少なくとも京都近郊で見られる 「カエデ黒紋病」 は本種であることが多いと思う。
子嚢の成熟は京都では4月中旬から5月初旬ごろ。
国内ではカエデ類に発生する Rhytisma 属菌は R. acerinum(カエデ類黒紋病菌)と R. punctatum(カエデ類小黒紋病菌)の2種が報告されている。
日本隠花植物図鑑には R. punctatum の子嚢胞子は 30-36 μm. とあるし、R. acerinum とは明らかに異なるので、消去法的にこれは R. punctatum だと思っていた。
だが R. punctatum はもっと小型の丸い子座が融合せずに多数群生するもののようである。子嚢胞子も直線的と言うから、これは Rhytisma punctatum ではないだろう。
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Rhytisma sp. no.1 としていたもの。10年以上も前のことだが、私のサイトを見た侯成林 (Hou Cheng Lin) という中国の研究者からメールが届いた。
サイトに挙げてあるリティスマ類の標本があれば送ってほしい、という内容だった。
特に断る理由もないので、請われるままにいくつかの標本を送っておいた。その後、私の勤務先やメールアドレスが変わったりで連絡が途絶えてしまったのだが、
送付した標本を基に、Wang et al. (2023) によって新種記載されたので表記学名に改めた。[2024.06.20 追記]
[別図2]
5月16日撮影。
[別図3]
4月6日撮影。 殻皮裂開前の子座。
[別図4]
4月18日撮影。 ホロタイプと同日同所で採集したもの。湿室に入れて翌日撮影。
[参考文献]
Hansen and Knudsen (2000): Nordic macromycetes. vol. 1. Ascomycetes.
Wang et al. (2023): Phylogeny and taxonomy of Rhytisma-like species worldwide. (Fungal diversity ; 120, p. 77-119).
[初掲載日: 2005.05.11, 最終更新日: 2024.06.21] //
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