Rhytisma shiraianum
Rhytisma shiraianum Hemmi & Kurata
モチツツジ黒紋病菌。5月7日撮影。
[特徴]
子座はツツジ類の枯葉の主に裏面に発達し、タール様のつやがある黒色かさぶた状。直径 0.3-1 mm. 程度の丸みを帯びた多角形で多数が群生し、しばしば融合する。
越冬後、落葉あるいは枝についたままの枯葉上で成熟し子嚢盤を形成する。成熟した子座は湿ると黒い殻皮が不規則に裂開してめくれ、淡灰色の子実層が現れる。--
子嚢は棍棒形で先端はやや乳頭状に突出し、下半は細長く伸びる。頂孔はメルツァー試薬に呈色しない。8胞子を不規則な束状に生じる。130-160 × 12.5-18.9 μm. --
側糸は糸状で無色、基部付近には隔壁があり、上下同幅、径 2.0-2.5 μm.、子嚢よりもやや長く、先端は緩やかに屈曲し螺旋状になる事が多い。--
子嚢胞子は長紡錘形で僅かに弓状に曲がる。上端は丸く、下半はやや細く下端は尖る。
無色薄壁、中央部以外は細かい泡状の内容物がある。全体が無色の被膜に覆われる。31.0-40.6 × 3.1-4.0 μm.
[コメント]
モチツツジ (Rhododendron macrosepalum) の落葉や、枝先に付いたままの枯葉上によく発生している。京都では5-6月頃に子嚢が成熟する。
原記載 (Hemmi and Kurata, 1931: p. 8) では学名は Rhytisma Shiraiana(下参照)と綴られている。
"Shiraiana" はもちろん植物病理学者の白井光太郎に因んだものである。
属名 Rhytisma は中性なので、形容詞の形容語は人名が母音で終わる場合は -an- とその属名の性に合致した主格単数語尾を付加してつくる、という
ICN の勧告 60C.1(c) に従えば Shirai-an-um で shiraianum が正しく、訂正されるべき誤りだと思う。
日本産樹木寄生菌目録(小林, 2007)や日本産菌類集覧(勝本, 2010)等は shiraianum としているのだが、
Index Fungorum や MycoBank では shiraiana を採っている。
[別図2]
1月14日撮影。 冬期、成熟前の子座。
[別図3]
5月11日撮影。 子実層が現れた子実体。
[別図4]
6月16日撮影。 落葉裏面側に生じた子座。葉脈以外の部分に広く発生している。
[別図5]
6月16日撮影。 [別図4]と同じ落葉の表面側に生じた子座。表面側の子座は葉脈に添って生じる場合が多い。
[参考文献]
Hemmi and Kurata (1931): Notes on three deseases of azaleas. (Forschungen auf dem Gebiet der Pflanzenkrankheiten ; Heft 1, p. 1-12).
植物病原菌類図説 (1992).
[初掲載日: 2005.05.13, 最終更新日: 2019.06.17] //
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