Rutstroemia sp. no.2
Rutstroemia sp. no.2.
ルトゥストロエミア属菌。9月6日撮影。
[特徴]
落枝上に単生あるいは少数が群生する。
子嚢盤は椀形から浅い皿形に開き縁は小さく内屈する。径 6 mm. まで。子実層面は平滑で茶褐色。
縁は全縁、外面はほぼ同色、表面には濃色で圧着した繊維状鱗片が粗く散らばる。柄は中心性で短く、黒褐色。子実体周辺の落枝の材部表面は黒変している。--
子嚢は円筒形、かぎ形構造から生じ、8胞子を初め一列に生じるが後にはほぼ2列になって先に固まる。先端は肥厚し頂孔はメルツァー液で青変する。122-134 × 10.6-12.3 μm. --
側糸は糸状、基部付近に隔壁があり、径 2.5 μm. 程度、先端は次第に膨らんで 2.8-4.5 μm. になり、内容はほぼ一様で淡黄褐色。--
子嚢胞子は長楕円形あるいはやや紡錘形、左右不対称で時に弓型に湾曲する。無色、薄壁、平滑、先端側はやや丸く、末端側は細く尖るものが多い。16-20 × 4.5-5.2 μm.。
初めは2または3個の大型の油球が目立つが後に3ないし4隔壁をほぼ等間隔に生じ、両端から発芽して分生子を座生する(あるいは非常に短い柄の先端に単生する)。
分生子は亜球形ないし広楕円形、無色、薄壁、一個の小さな油球が偏在し、長径 2.0-2.4 μm. --
子実下層はやや黄褐色を帯びる。托髄層は無色薄壁で径 4-9 μm. の曲がりくねったソーセージ形の細胞からなる絡み合い菌組織で、細胞の表面には所々に淡褐色の小さな結晶状物質が付着する。
外皮層との境には淡褐色のほぼ平行に走る菌糸層がある。
外皮層は厚さ 60 μm. 程度、ほぼ無色の径 10 μm. 程度までの矩形状の菌糸組織からなり、やや厚膜でゼラチン化しているように見える。
最外層には径 3-6 μm. の菌糸がある。隔壁があり表面には淡褐色の細かい結晶状物質が付着する。しばしば絡み合って束状になり僅かに立ち上がり、先端は丸い。
[コメント]
ミズナラを主とする落葉樹林内の落枝片に発生していたもの。落枝の種類は未確認。
やや尖った子嚢胞子は後に隔壁を生じて小型の分生子を座生する。この特徴は Rutstroemia firma に良く似ているが、
R. firma とは托組織の特徴が微妙に違うように思える。(Fungi of Switzerland の no. 153 で図示されている菌はどうやら別種 R. alni Remy らしい。)
R. firma には近似種がいくつか知られているので、Rutstroemia 属菌としておく。組織がゼラチン化する特徴を重視して Poculum 属とすべきものかもしれない。
[参考文献]
White (1941): A monograph of the genus Rutstroemia (Discomycetes). (Lloydia ; 4(3). p. 153-240).
[初掲載日: 2018.05.25]