Shiraia bambusicola
Shiraia bambusicola Henn.
タケ類の赤団子病菌。8月31日撮影。
[特徴]
子座はタケ類の枝先近くに発生して枝を巻き込むように成長して塊状になる。枝に沿って長く、長さ 5 cm.、最大径 2 cm. までになりやや硬い肉質。
表面はざらついたかさぶた状、ピンク色から淡い汚バラ色。古い子座の表面は白っぽくなり、さらには不完全菌等が発生して暗緑色などになる。
内部もほぼ同色で充実しているが、部分的に小さな空隙があったり暗褐色になっている部分がある。--
小房は一層に埋生し表面に小さな孔口を開くがほとんど突出せず目立たない。球形から広楕円形、卵形などで直径 460-580 μm. --
子嚢は円筒形で短柄があり、厚膜(二重膜)。メルツァー液に呈色しない。6胞子(まれに4個)を一列に生じる。290-360 × 22-27 μm. --
偽側糸は糸状で無色、基部付近で分岐し隔壁がある。径 1.2-2.3 μm. --
子嚢胞子は広紡錘形、やや左右不対称、ほとんど無色。横隔壁が 7-12 個、縦隔壁が片面で 2-3 個あり隔壁部はややくびれて全体が石垣状になる。
各細胞には油球が含まれる。一子嚢中でも大きさのばらつきが大きい。51-71.5 × 14.2-24.0 μm. --
子座組織はやや厚膜で無色の菌糸からなる絡み合い菌組織で菌糸表面には暗紅色の結晶様物質がまばらに附着する。--
若い子座では分生子が観察できる。子座の芯付近(寄主と接している箇所)に径 0.5 mm. 程の不正球形の分生子殻が多数形成される。
分生子は多量に形成され、オレンジ色の飴状になって寄主と子座の隙間から押し出され、ひも状やリボン状になって付着するが雨などによって容易に流される。
分生子はほぼ無色、左右不対称の紡錘形や太いナメクジ形で末端はやや伸びる物が多い。48.2-91.6 × 25.4-31.5 μm.、
横隔壁が 9-14 個、縦隔壁が片面で 2-4 個、隔壁部はややくびれて全体が石垣状になる。各細胞には油球が含まれる。
[コメント]
マダケに発生していたもの。属名は白井光太郎博士に因むので白井菌とも言われる。
菌学の教科書などにもよく取り上げられているのだが余り見かけない。
竹林全体に発生するのではなく、数本程度のタケに固まって発生する事が多いようである。
子嚢胞子は減数分裂の結果なので2の乗数が基本であり、8個の種類が大半だ。
4, 16, 32 個等の種類はあるけれども 6 が正常数というのは例外的だ。
甘露を分泌するなど生態的にも興味深い。中国では漢方薬として使われているらしい。
[別図2]
6月12日撮影。分生子塊を出す若い子実体。子嚢はまだ殆んど形成されていない。
[参考文献]
Amano (1980): Studies on the Japanese Loculoascomycetes II. Taxonomic position of the genus Shiraia. (Bull. Natn. Sci. Mus., ser. B.(Bot.), 6(2), p. 55-60).
[初掲載: 2008.09.19, 最終更新日: 2010.06.28]