Sooty mould sp. no.1

Sooty mould sp. no.1

Sooty mould sp. no.1
すす病菌類。6月19日撮影。

[特徴]
生葉の表面に黒色のフィルム状の菌叢が斑点状からほぼ全面に拡がる。表面はややざらついた感じで脆く、容易に剥離、脱落する。 寄主にはほとんど異常は見られないが、菌叢に覆われた部分は僅かに淡色になることが多い。 菌糸は表在性で分岐し、黒褐色、厚膜、平滑、各細胞は比較的短く、隔壁部は括れ、4-15 × 2.8-5.5 μm.、菌足や剛毛は無い。-- 子嚢殻は菌叢中に散生し、ほぼ球形ないし扁球形、基部は僅かに括れ、乾燥時には上面が窪んで椀状になる。 黒色、ほぼ平滑、径 250-300 μm.、表面は径 5-10 μm. 程度の厚膜褐色の多角形細胞からなる。頂孔はほとんど突出せず不明瞭、乳白色の胞子塊を出す。-- 子嚢は広楕円形ないし細卵形、比較的薄壁、目立った先端構造は見られず、ルゴール試薬に呈色しない。不明瞭な短柄がある。 8胞子をほぼ束状に生じる。57-69 × 20-32 μm. -- 明瞭な側糸様の細胞を観察できないが、子嚢殻内にはややゼラチン質鞭状にみえる細胞があり、ルゴール試薬で赤褐色に染まる。-- 子嚢胞子は両端の丸い長紡錘形、無色、薄壁、平滑、ほぼ均等に7-9隔壁を生じ、隔壁部は僅かに括れる。48-69 × 5.5-6.6 μm.。 先端から発芽し、隔壁の括れた短い細胞が連なる。-- この菌のものと思われる不完全世代は観察できなかった。

[コメント]
ヤブニッケイ (Cinnamomum yabunikkei) に発生していた、いわゆるすす病菌。 鍵渡 (1975) にある検索表で、表在菌糸に菌足や剛毛が無い、子嚢胞子は無色、円柱状で複数の横隔壁がある、などの特徴で調べると Limacinia にたどり着く。 国内で記録のある Limacinia harae W.Yamamoto は常緑樹の葉に発生する菌だが、特徴が異なるように思える。 邦産のすす病菌をまとめた論文が少なく、最新の分類体系がよく判らないので不明菌扱いにしておく。

[参考文献]
Hughes (1976): Sooty moulds. (Mycologia ; 68(4), p. 693-820).
Reynolds (1985): Foliicolous ascomycetes. 6. the capnodiaceous genus Limacinia. (Mycotaxon ; 23, p. 153-168).
鍵渡 (1975): 緑化樹木のすす病. (植物防疫 ; 29(8), p. 314-317).
山本 (1959): Capnodiaceae の種類の改正. (兵庫農科大学研究報告. 農業生物学編 ; 4(1), p. 17-22).

[初掲載日: 2025.03.31] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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