Spathularia flavida Pers.
ヘラタケ。８月２９日撮影。

[特徴]
子実体は子実層のある頭部と柄からなり、高さ 2-5 cm. 程度。頭部は扁平なヘラ状ないし不整軍配形でときにややしわ状になる。淡黄色ないしやまぶき色、平滑、粘性は無く、幅 10-20 mm. 程度。 柄は白っぽく、平滑、中実で柔らかく、基部はやや膨らむ事が多く、時に白色の菌糸束が落葉層中に拡がる。 柄の上半は頭部の過半を左右に分けて中肋状になり、子実層との境界は明瞭だが、襟状にはならない。-- 子嚢は棍棒状、先端はやや円錐状になり、メルツァー試薬に呈色しない。８胞子を束状に生じる。 122-160 × 11.5-17.0 μm. -- 側糸は糸状、無色、隔壁があり、径 2.0-2.6 μm.、上半はやや細く、径 1.0-1.5 μm.、分岐し、不規則に屈曲あるいは緩いらせん状になる。-- 子嚢胞子は糸状、射出後は緩い弓型になり、末端側はやや細まる。無色、平滑、初めはまばらに油球を含み、隔壁は無い。45-58 × 2.0-2.8 μm.、やや不明瞭なゼラチン状の被膜がある。 後に少数の隔壁を生じ、分生子を座生状に出芽する。分生子は亜球形ないし広楕円形、無色、平滑、径 2.0-2.5 μm. 程度。-- 子実下層は無色薄壁で径 10-20 μm. の球形細胞からなり、髄層は無色薄壁、径 5-20 μm. のやや平行に走る絡み合い菌糸組織からなる。

[コメント]
夏から秋頃、落葉の多い地上に散生あるいは群生し、カラマツ林で見る事が多い。京都付近では少ない。 画像はやや乾燥した子実体。色調や子嚢胞子の変異が大きく、幾つかの変種が記載されているが、複数の独立種に分けられるものだろう。 ここでは従来日本産のヘラタケに当てられている学名を使っておく。 今関・本郷著 「原色日本菌類図鑑」 (1957) には、"胞子は細長く、100-200 × 11-13 μ 位" とあるが、これは子嚢の計測値と思われる。 以前はテングノメシガイの仲間とされていたが、現在はホテイタケ属 (Cudonia) と共に Rhytismatales に含められている。

[参考文献]
Ge et al. (2014): Multigene molecular phylogeny and biogeographic diversification of the earth tongue fungi in the genera Cudonia and Spathularia (Rhytismatales, Ascomycota). (PLoS ONE ; 9(8), p. 1-13).
Imai (1941): Geoglossaceae Japoniae. (Journal of the Faculty of Agriculture, Hokkaido Imperial University ; 45(4). p. 155-264).
Mains (1955): North American hyaline-spored species of the Geoglosseae. (Mycologia ; 47, p. 846-877).

[初掲載日: 2020.09.18] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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