Stephanoma sp. no.1
Stephanoma sp. no.1
ステファノマ属菌。7月6日撮影。
[特徴]
寄主の子実体の子実層部を中心としてほぼ全面に白色菌糸が広がる。
初めは薄い霜状で白色、やがて厚い白色粉状になり、さらに淡桃色から淡黄褐色になり、寄主の子実体は柔らかく崩れていく。
子嚢殻は確認できず、観察できたのは不完全世代のみ、2型の分生子を生じる。--
発生初期にはフィアロ型分生子が多く見られる。分生子は楕円ないし長楕円形、無色、薄壁、10-12 × 3.4-3.8 μm.、1ないし2個の不明瞭な油球状の内容物がある。
厚膜胞子はアレウロ型、分岐した短い菌糸の先端に形成される。先端が球形に膨らんで隔壁ができ、上下2細胞に分れる。
先端側の細胞は亜球形ないし丸みを帯びた立方体状、やや厚膜、淡黄褐色、径 8.5-10.6 μm.、側面に普通4個、上部に1個の付属細胞が形成される。
周囲の細胞を含めると径 20-22 μm. 程度になる。付属細胞は半球形ないしまんじゅう形、径 6.8-8.0 μm.、高さ 5-6 μm.、やや厚膜、ほとんど無色。
基部側の細胞は倒円錐形の台座状になり、無色。
[コメント]
テングノメシガイ属菌に発生していたもの。
全体が脆弱で崩れやすく、寄主の頭部(子実層の形成される部分)の大半が脱落していたので子嚢胞子を確認できなかったが、
おそらくテングノメシガイ (Trichoglossum hirsutum) と思われる。
シロスズメノワンに発生する Stephanoma strigosum Wallr. に比べて厚膜胞子はやや小型である。
Stephanoma 属は数種ほどが記録されているが、ヒメテングノメシガイ (Geoglossum) 属に発生する
S. tetracoccum Zinderen-Bakker は、厚膜胞子表面に刺状突起を持つと言うから異なる。
Stephanoma 属の完全世代として Hypomyces 属が知られているが、テングノメシガイ類に生じる Hypomyces papulasporae は Papulaspora 型の厚膜胞子を形成する。
[参考文献]
Rogerson and Samuels (1985): Species of Hypomyces and Nectria occurring on Discomycetes. (Mycologia ; 77, p. 763-783).
Zinderen-Bakker (1934): Stephanoma tetracoccum spec. nov. (Annales mycologici ; 32(1-2), p. 101-104).
[初掲載日: 2017.02.10]