Tatraea macrospora (Peck) Baral = Ciboria peckiana (Cooke) Korf
クチキノサカズキタケ。８月６日撮影。

[特徴]
朽木に散生あるいは群生する。子嚢盤は椀状からほとんど平開し径 3-8 mm.、子実層面は平滑、淡いベージュ色からやや紫色を帯びた淡褐色、 縁は全縁、僅かに濃色に縁どられるものが多い。外面はほぼ同色あるいはわずかに濃色でほとんど平滑、時に細かい糠状になり、また放射状のしわがある。 柄は中心生でやや太く、ほぼ平滑、長さは普通は 2-3 mm. 程度だが長いものでは 7-8 mm. に達するものもある。-- 子嚢は棍棒形、先端は肥厚して頂孔はルゴール試薬で青変する。基部にはかぎ形構造がある。８胞子を初め１列に生じ、後には２列になる。175-195 × 13.7-14.3 μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり、径 2-2.5 μm.、内容物はほとんど無色。先端はやや膨らんで径 2.5-3.0 μm. になる。-- 子嚢胞子は細楕円形、両端は丸く、無色、薄壁、平滑、左右不対称でわずかに弧状に曲がるものが多い。内容物は泡状で、やや大きめの数個の油球が目立つ。 28.6-36.5 × 6.5-8.2 μm.、射出時は隔壁は認められないが、後に３（稀に５）個の隔壁を生じ、各細胞（特に両端細胞の先端）から発芽する。 発芽管は径 1-1.5 μm.、普通は長さ 5 μm. 程度までに伸びて先端に二次胞子を単生するが、時に菌糸状になって 30 μm. を超える。 二次胞子は球形ないし亜球形、無色、薄壁、平滑、比較的大きな油球を含み、径 1.8-2.5 μm. -- 托組織髄層は絡み合い菌組織で、ほぼ無色薄壁で径 3-8 μm. 程度の菌糸よりなる。外皮層との境界付近はほぼ平行に走るやや密な菌糸層がある。 外皮層は厚さ 60 μm. 程度まで、薄壁でやや褐色を帯びる球形ないしやや角ばった細胞からなる。各細胞は径 15 μm. 程度まで。

[コメント]
夏から秋頃、広葉樹の朽木材部に普通にみられる。色彩は白っぽいものからかなり色の濃いものまで変異が大きい。 本郷次雄監修「きのこ」（山と溪谷社, 1994. 新装版, 2006. 盤菌類の解説は長尾英幸）では和名が与えられず "キボリア ペキアナ" とされている。

[別図２] １０月１０日撮影。かなり白っぽい子実体。
[別図３] ９月２９日撮影。

[参考文献]
Baral et al. (1999): Tatraea dumbirensis, new records of a rare leotialean discomycete in Europe. (Österreichische Zeitschrift für Pilzkunde ; 8, p. 71-82).
Spooner (1987): Helotiales of Australasia : Geoglossaceae, Orbiliaceae, Sclerotiniaceae, Hyaloscyphaceae. (Bibliotheca mycologica ; Bd. 116).

[最終更新日: 2025.10.31] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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