Tricharina japonica
Tricharina japonica Yang & Korf
トリカリナ ヤポニカ。10月29日撮影。
[特徴]
腐植質の多い地上に発生する。子嚢盤は椀状からやや平らに開き、径 5-7 mm.。子実層面は僅かに灰色を帯びる乳白色、平滑。縁には長い褐色の縁毛がある。
外面は灰白色だが、短い褐色の剛毛をまばらに生じ、肉眼ではまだらな淡褐色に見える。柄は無く、やや広く基質に固着する。肉は白色、変色性は無い。--
子嚢は円筒形、薄壁、有蓋、メルツァー試薬に呈色せず、8胞子をほぼ一列に生じる。177-189 × 13.5-14.6 μm. --
側糸は糸状、隔壁がある。径 2.5-3.5 μm.、先端は次第に膨らんで 5.8 μm. までになり、無色の泡状内容物がある。--
子嚢胞子は両端の丸い紡錘形で時に左右不対称、無色、薄壁、平滑。中央付近に球形の不明瞭な核様の内容物がある以外は一様。19.7-22.1 × 8.2-9.2 μm. --
托組織髄層は絡み合い菌糸組織、無色薄壁の径 12 μm. までの菌糸からなり、所々に 20 μm. 程度までにふくらんだ球形ないし楕円形の細胞が混じる。
外皮層は厚さ 150 μm. 程度まで、45-60 × 20-30 μm. 程度の丸みを帯びた無色の多角形細胞からなるが、最外層の細胞は淡褐色。
縁部の細胞はやや褐色を帯び、長電球形、22-35 × 8-14 μm. 程度。
外面の剛毛は表面細胞から伸び、時に束状に生じ、褐色、厚膜、平滑、隔壁は下半に多い。
直線的で縁部付近のもので長さ 700 μm. 程度までになり、基部付近で径 18 μm. まで、次第に細くなり先端付近で径 5 μm. 程度になるが、尖らない。
子嚢盤下面からは基質表面や基質中に無色薄壁の毛状菌糸が伸びる。隔壁、分岐があり径 5.6-9.0 μm.、先端は丸い。
[コメント]
落葉樹林内の地上に発生していたもの。秋から初冬頃に採集している。
左右不対称で紡錘形の子嚢胞子などの特徴は良く一致するが、Yang and Korf (1985) の原記載では子嚢胞子は小さめな値 (7.3-9.5 × 15.8-19.0 μm) となっている。
この子嚢胞子の形は Yang and Korf (1985) では "trapezoidal"(台形)と表現されているのだが、それほど極端に不対称な子嚢胞子は観察できなかった。
福岡で採集された標本に基づいて記載された種で、最近になってヨーロッパから報告されている。
[参考文献]
Dougoud and De Marchi (2012): Tricharina japonica (Pezizales) : une espèce nouvelle pour l'Europe, découverte en Suisse. (Schweizerische Zeitschrift für Pilzkunde ; 90(4), p. 134-139).
Kušan et al. (2015): Tricharina tophiseda - a new species from Croatia, with a revision of T. japonica (Pyronemataceae, Pezizales). (Phytotaxa ; 221(1), p. 35-47).
Yang and Korf (1985): A monograph of the genus Tricharina and a new segregate genus, Wilcoxina (Pezizales). (Mycotaxon ; 24. p. 467-531).
[初掲載日: 2016.11.18]