Trichoglossum hirsutum
Trichoglossum hirsutum (Fr.) Boudier
テングノメシガイ。7月22日撮影。
[特徴]
地上に単生ないし散生、時に群生する。子実体は全体黒褐色、子実層のある頭部と柄からなる。高さ 1.2-6 cm.、軟らかい肉質。
頭部は球形、楕円形、たまねぎ状、瘤形など変異が大きく、時に扁平になり凹む場合もある。最大径は 3-12 mm. になり、柄との境界は明瞭。
柄は円柱形、中実、径 1-2.5 mm.、子実体全体に微小な剛毛を密に生じる。薬品の様な一種独特の臭いが僅かにある。--
子嚢は棍棒形、薄壁、先端はやや円錐状で頂孔はメルツァー試薬で青変し、基部は急に細くなり短い柄状。8胞子を束状に生じる。170-210 × 18.5-20.0 μm. --
側糸は糸状、隔壁があり上半は淡褐色、下半はほぼ無色、径 2.4-3.4 μm.、先端は次第に膨らんで 6 μm. までになり、緩やかに屈曲するものが多く時にらせん状。--
子嚢胞子は長棍棒形、褐色、直線的あるいは僅かに湾曲し、末端側はやや細い。ほぼ等間隔に 15 隔壁を生じる。105-140 × 5.2-6.2 μm. --
剛毛は針状、黒褐色、厚膜。子実層下部付近から生じる。先端は尖り、基部は細まるが分岐はしない。
やや淡色な剛毛では少数の隔壁が認められる事があるが、濃色の剛毛は不透明で隔壁の確認は難しい。
200-320 × 8.0-11.5 μm.、上半は子実層から突出し、その長さは 60 μm. 以上になる。柄に生じる剛毛もほぼ同じだが、時に数本の剛毛が束状に生じる。
[コメント]
初夏から秋にかけて、地上やコケ中に発生するものが多い。寺院の庭等にも比較的普通に発生する。
子実体の形は変異が大きく、いくつかの変(品)種が記録されているが、
様々な大きさや形の子実体が混生するし中間型も多く、どの程度まで区別できるかは疑問で、現在はシノニムとされているものもあるようだ。
大型で頭部が心臓形やスペード形になるものと、小型で頭部がほぼ球形のものでは肉眼的にはかなり異なって見えるが、
顕微鏡的な特徴に明瞭な差は認められない。コケ群落中に生じるものは大型になる事が多いように思う。
[別図2]
7月7日撮影。全体に小型で頭部がほぼ球形のタイプ。カシ林内のやや砂質の地上に発生していた物。
[参考文献]
今関・本郷編 (1989): 原色日本新菌類図鑑 (II).
Imai (1941): Geoglossaceae Japoniae. (Journal of the Faculty of Agriculture, Hokkaido Imperial University ; 45(4), p. 155-264).
Mains (1954): North American species of Geoglossum and Trichoglossum. (Mycologia ; 46, p. 586-631).
[最終更新日: 2016.07.08]