Trichoglossum kunmingense
Trichoglossum kunmingense Tai
トリコグロッスム クンミンゲンセ。8月1日撮影。
[特徴]
子実体は地上にやや群生する。子実層のある頭部と柄からなり、全体で高さ 2-5 cm. 程度。
頭部は扁平になり、へら状あるいはしゃもじ状、幅 7-20 mm. 程度、黒色、粘性は無く、肉眼ではほとんど平滑、ルーペ下ではビロード状に見える。
柄は径 3-6 mm.、時にやや扁平、中実、黒色、ビロード状、頭部との境界は明瞭、全体が軟らかい肉質。子実体全体に微小な剛毛を密に生じる。--
子嚢は円筒形、先端は肥厚し、頂孔はメルツァー液で青変し、基部は2叉状。6あるいは8胞子を不規則な束状に生じ、6胞子性のものが多い。188-206 × 20-23 μm. --
側糸は糸状、隔壁があり淡褐色、径 2-3 μm.、先端は膨らんで径 5 μm. までになって丸く曲がり、緩いコイル状になる場合もある。先端付近の細胞壁は不完全な環状に肥厚し、まだら模様に見えるものがある。--
子嚢胞子は長短の2型がある。8胞子性の子嚢では長短4胞子づつ、6胞子性の子嚢では長型4個、短型2個の子嚢胞子を生じ、どちらの場合も短型の胞子は子嚢の先端近くに固まることが多い。
共に円筒形、褐色、平滑、先端は丸く、末端はやや細まる。長型の子嚢胞子は 90-135 × 6.0-6.8 μm.、ほぼ等間隔に7隔壁を生じ、8細胞。
短型の子嚢胞子は 34-48 × 5.3-6.0 μm.、1あるいは3隔壁を生じ、長型の子嚢胞子と同色かあるいは僅かに淡色。--
剛毛は直線状黒褐色で厚膜、先端は尖り、137-177 × 5-6 μm.、基部はやや細くなり 径 3 μm. 程度。
[コメント]
寺院の庭園、生垣のアラカシ樹下に群生していたもの。肉眼的にはテングノシャモジやナナフシテングノメシガイに良く似ている。
長短2型の子嚢胞子を生じるのが特徴だが、不思議なことに Tai (1944) の原記載には短型の子嚢胞子についての言及が無く、簡単な記載からは近似種との差異がはっきりしない。
そのためだろうか、Mains (1954) は T. kunmingense は T. octopartitum、T. confusum と共に T. walteri として一種にまとめるのが妥当だろう、としている。
中国雲南省昆明 (Kunming) から記載された菌で、中国のレッドリスト(中国生物多様性紅色名録:大型真菌巻, 2018)では "極危 CR"(Critically endangered、日本の絶滅危惧 IA 類にあたる)とされているが、
極東ロシア沿海地方からも記録されている。
[参考文献]
Fedosova (2019): Семейство Geoglossaceae (Ascomycota) в России.
Mains (1954): North American species of Geoglossum and Trichoglossum. (Mycologia ; 46, p. 586-631).
Tai (1944): Studies in the Geoglossaceae of Yunnan. (Lloydia ; 7(2) ; p. 146-162).
Zhuang and Wang (1997): Some new species and new records of Discomycetes in China. VII. (Mycotaxon ; 63. p. 307-321).
[初掲載日: 2020.10.02] //
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