Trochila laurocerasi
Trochila laurocerasi (Desm.) Fr.
トロキラ ラウロケラシ。4月30日撮影。
[特徴]
落葉裏面に群生する。子実体はクチクラ下に生じ、成熟すると上面が不規則な放射状に破れて子実層が現れ、平板状ないし僅かに盛り上がったクッション形、周囲にはめくれた表皮が反り返って残る。
子実層面は灰褐色ないし淡紫褐色、古くなると暗褐色、平滑、径 600 μm. 程度までになる。--
子嚢は円筒形、薄壁、先端は肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で青変する。基部にはかぎ形構造がある。8胞子をほぼ一列に生じ、後には不規則な2列に並ぶ。57-88 × 7.7-10 μm. --
側糸は糸状、隔壁があり、径 1.8-2.2 μm.、先端はやや急に膨らんで径 3.5 μm. まで、黄色を帯びた内容物があり、時に黄褐色のヤニ状の被膜がある。--
子嚢胞子は楕円形、無色、薄壁、平滑、一個の大きな油球が目立つ。7.2-9 × 4-4.8 μm. --
托組織髄層はほぼ無色の丸みを帯びた径 8 μm. 程度までの細胞からなる。子実体底部には褐色の細胞層がある。
縁部の細胞は棍棒状、やや厚膜、淡褐色、径 3-4 μm. 程度で側糸と同様の内容物があり、薄いゼラチン質様の被膜があるように見える。
[コメント]
カナメモチ (Photinia glabra) の新しい落葉に生じていたもの。
Gómez-Zapata et al. (2021) に拠ると Trochila laurocerasi はセイヨウバクチノキなどのバラ科植物に発生し、寄主として Photinia serrulata(オオカナメモチ)が挙げられている。
子嚢胞子がやや幅広い以外は特徴は良く一致すると思うので、この学名を当てておく。
[参考文献]
Gómez-Zapata et al. (2021): Notes on Trochila (Ascomycota, Leotiomycetes), with new species and combinations. (MycoKeys ; 78, p. 21-47).
Greenhalgh and Morgan-Jones (1964): Some species of Trochila and undescribed discomycete on leaves of Prunus laurocerasus. (Transactions of the British Mycological Society ; 47(3), p. 311-320).
Stoykov and Assyov (2009): The genus Trochila in Bulgaria. (Mycotaxon ; 109, p. 351-359).
[初掲載日: 2024.08.05] //
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