? sp. no.46
? sp. no.46
よくわからない盤菌類。11月21日撮影。
[特徴]
子実体は表皮下に発達し、成熟すると宿主の表皮が縦に割れて紡錘形の子実層が現れる。子実層面は平滑、やや青みを帯びた灰白色で粉状に見え、2 mm. × 0.3 mm. 程度まで。
縁は宿主表皮が小さくめくれ、内側は白っぽく見える。--
子嚢は円筒形、薄壁、先端は肥厚してやや尖り乳頭状、頂孔はメルツァー試薬で呈色しない。8胞子を束状に生じる。57-72 × 8.0-8.6 μm. --
側糸は糸状、無色、隔壁は不明瞭、径 1.4-2.0 μm.、やや屈曲し、時に先端付近で分岐する。先端付近は互いに合着し、淡色の細かい砂状の結晶物が付着する。--
子嚢胞子は糸状、直線的、両端は尖り、無色、薄壁、まばらな油球状の内容物があり、被膜は確認できない。後に中央付近に隔壁を生じて2細胞になる。51-55 × 1.7-2.0 μm. --
縁の細胞は淡褐色、多角形細胞からなる。
[コメント]
ススキの枯稈の根際近くに発生していた物。子実層表面が粉状白色なので、Propolis 属あたりだろうと思って採集したのだが、検鏡したら子嚢胞子が糸状だった。
Korf の検索表 (Ainsworth et al. ed. The Fungi. vol. IVA. 1973. chap. 9) ではうまく絞り込めなかった。
Minter (2003) で Marthamyces 属にあたりをつけ、Johnston and Park (2019) で Marthamyces culmigenus (Ellis & Everh.) P.R. Johnst. と言う菌にたどり着いた。
Naemacyclus culmigenus Ellis & Everh. に対して提唱された新組み合わせである。
この菌は、最近 Hosoya et al. (2013) によって菅平のススキから報告されているが、当初は検討対象から外していた。
日本産の N. culmigenus はススキの枯葉に発生していたもので、論文にある子実体の写真 (fig. 1. D, E) はむしろ楕円形で反り返った縁部は暗色に見え、かなり肉眼的特徴が異なると思えたからだ。
改めて細矢らの論文を読んでみると、似た点も多いが、子嚢胞子は 37-42 × 2-3 μm. とあり、かなり異なる。
Ellis and Everhart (1893) の原記載(*注参照)に拠ると、Panicum proliferum(キビ属)の枯稈に発生したもので、"Narrow-elliptical, 1-1½ × ½-¾ mm., acute at each end bordered by the ruptured epidermis.
Disk livid-white. Asci oblong, obtusely pointed, 50 × 6μ. Sporidia linear-fusoid, continuous, about 40μ, long, faintly nucleolate." となっている。
私の採集品は Marthamyces 属菌かも知れないが、M. culmigenus とは別種だろう。
*注: Hosoya et al. (2013) は、原記載論文を本文中では "Proc. Acad. nat. Sci. Philad. 46: 151. 1894" と引用しているが、引用文献リストでは同文献の掲載誌巻号と出版年を v. 46 (1893) としている。
Biodiversity Heritage Library で確認した。原記載論文の掲載年は 1893 年である。
1857-1900 年の間は標題紙等に巻号表示が見当たらないが、1856 年発行巻には v. 8、1901 年発行巻には v. 53 の表示があるので、1893 年は v. 45 に当たるだろう。
[参考文献]
Ellis and Everhart (1893): New species of North American fungi from various localities. (Proceedings of the Academy of Natural Sciences of Philadelphia ; [45], p. 128-172).
Hosoya et al. (2013): Naemacyclus culmigenus, a newly reported potential pathogen to Miscanthus sinensis, new to Japan. (Mycoscience ; 54, p. 433-437).
Johnston and Park (2019): New species of Marthamyces and Ramomarthamyces gen. nov. from New Zealand and the Cook Islands. (Mycotaxon ; 134, p. 489-516).
Minter (2003): Propolis and Marthamyces gen. nov. (Rhytismatales). (Mycotaxon ; 87, p. 43-52)
[初掲載日: 2020.01.10] //
[サイトのトップへ] //
[掲載種一覧表へ]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2020.