Wynnea gigantea
Wynnea gigantea Berk. & Curt.
ミミブサタケ。6月18日撮影。
[特徴]
子実体は地中の菌核から10本からそれ以上の子嚢盤が房状に生じる。
子嚢盤はウサギの耳状で高さ 12 cm. 幅 4 cm. までになる。子実層面はレンガ色から紫褐色になる。
外面はほぼ平滑でレンガ色。全体に丈夫な革質。--
子嚢は円筒形で厚膜。8胞子を一列に生じる。400-420 × 13-15 μm. --
側糸は糸状で隔壁がある。ほとんど無色。3.5-4.0 μm. 先端はわずかに膨らんで 6.0 μm. までになる。--
胞子は豆形で無色。3-4 個の油球を含む。26.0-32.6 × 13.0-14.5 μm.。
両端は時にやや平らになることがある。縦の条線が片面に3-4本ほど見えるが不明瞭で詳細は観察しづらい。--
菌核はカリントウ状で表面は黒褐色。内部は赤褐色の実質の中に白い斑が入り、サラミのような感じである。
[コメント]
比較的稀な種類といわれ、あまり出会う機会は無い。
菌核は地中の埋もれ木に沿って発達していた。不規則に分岐した塊状で犬の糞のような外観である。
原色日本新菌類図鑑(II)で大谷博士は「日本産の菌にこの学名 [W. gigantea] をあてることに疑問はある」としている。
Otani (1980) では W. macrotis を W. gigantea の異名としているが
Pfister (1979) は "enigmatic species" としながら、やや胞子が小型で外面に "hyphoid hairs" が立ち上がる物に
W. macrotis を当てている。上記の京都産ミミブサタケはやや胞子が小型であるが上記のような毛は観察できない。
[別図2]
まだ若いもの。遊歩道脇の崩れ止めの丸太の近くから大小80本近くが生じていた。
成長はかなり遅く、地表に幼菌が現れてから胞子を飛ばすようになるまでに一ヶ月近くかかった。6月4日撮影。
[映像1] 胞子の噴出。
チャワンタケ類は成熟すると勢いよく胞子を噴出する。
小型の種類でも観察できるが大型種のほうが判り易く、白煙状に吹き上げられるのが多くの種類で観察できる。
ミミブサタケは日本で見られるチャワンタケ類では最も顕著な噴出が観察できるものの一つではないかと思う。
耳を澄ますとシューッという音が聞こえる。
[別図2] のミミブサタケが成熟するのを待って6月24日に撮影した。息を吹きかけて刺激している。
[参考文献]
Otani (1980): Sarcoscyphineae of Japan. Trans. mycol. Soc. Japan ; 21. p. 149-179
Pfister (1979): A monograph of the genus Wynnea (Pezizales, Sarcoscyphaceae). (Mycologia ; 71. p. 144-159)
Zhuang (2003): Notes on Wynnea (Pezizales) from Asia. (Mycotaxon ; 87. p. 131-136)
[初掲載日: 2004.06.24, 最終更新日: 2005.07.25]