中村正直譯「西國立志編」(花井卯助, 明治15年6月24日翻刻御届)表紙の裏張り
「西國立志編」は Samuel Smiles の "Self-Help"(自助論)を中村正直が翻訳したもの。
明治4年に出版された明治時代のベストセラーの一つで、当時の若者に与えた影響は大きい。
京都大学附属図書館所蔵の明治15年の翻刻 [十三編11冊。請求記号 1-84/サ/13, 原簿番号 763195] を調べた。
第一編見返しは "大日本中村正直譯 | 西國立志編 原名自助論 | 明治十五年壬午第六月 同盟書樓"。
第十三編奥付にある翻刻出版人は "大坂府平民 花井卯助 東區安土町四丁目拾壱番地"。
第一編の表紙は糊付けがとれ、表紙の裏張りに使用された反故紙が見える状態になっている。
反故紙は他の出版物の本文、1丁の10行分が見える。
判読できる最初の行は "守ル者皆解走リ小田原ニ入ル諸将密ニ欵ヲ秀吉ニ送ル"、
最終行は "リ城中人々相疑フテ逃亡相踵ク七月氏直遂ニ降ヲ乞フ" とある。
豊臣秀吉の小田原征伐の描写だろう。「日本史略」の一節であることがわかった。
「日本史略」は複数の版本があるが、陸軍省藏版、文刻堂翻刻(明治13年11月)のものと版面が一致する。
裏張りに使用されているのは、第三巻の丁46ウラ。最初の一行は綴目に隠れている。
[2025.10.10 記]
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