「地形論」(明治10年12月刊行)見返しの裏張り

米国コーネル著 帆足義兼譯 中邨正直校正 「地形論」を2点調べた。
1点目は、京都大学吉田南総合図書館所蔵本 [請求記号 650/1/三高和]
和装、四巻4冊、出版人は帆足義兼、明治10年12月刊行。
見返しの裏紙は両面が確認できる状態になっている。活版、1ページ12行、1行25字。
表側ページ1行目は "りし樣子なれば一人り燈火の下に坐し心中に思ふやう去"、
最終行は "を見せなば猶も病苦を增さるゝならんと身を起して裏口" とあり、"三十八" の丁表示がある。
裏側ページ1行目は "より遁れ出で竊に親戚の家に忍び其夜の内に船にて長崎"、[変体仮名はひらがなで表記]
最終行は "りと聞て尋ね來りければ山崎は有馬こそ此高岡にて人望" とある。
伊藤卓三編「遭難記實」だとわかった。明治10年9月出版、印行発売は日報社。

2点目は京都大学附属図書館室賀文庫本 [請求記号 室賀/G/86/和1]
室賀信夫旧蔵本。1冊に合冊製本されているが、第一巻の見返しは保存されていて、裏紙も確認できる。
なお、第四巻の奥付の日付は明治十二年十月。
裏紙は半葉のほぼ全面が確認でき、11行、製版に見える。最初の4行に内題、訳者、章表示、章題がある。
"脩身論後編巻二 | 阿部泰藏 譯 | 第七章 | 親ノ職務及ヒ其權ヲ論ス"
本文は7行。
"親ノ子ニ對シテノ間ハ何ノ為メニ設ケタルモノナル"
"ヤ多クノ議論ヲ待タスシテ容易ニ之ヲ知ルヘシ"
[4行省略]
"之ヲ享クルニハ知識ナカルヘカラス然レトモ無知朦昧" [トモは合字]

タイトル、訳者があるので原本は容易に判るだろうと思ったのだが、そうではなかった。
国立国会図書館デジタルコレクション公開本等も含めて、後編巻二の冒頭部が確認できた「脩身論」は、以下の8種。
A. 奥付に "小學校用書籍賣払所 滋賀縣下書肆 大津丸屋町 澤宗次郎" とあるもの。
B. 奥付に "官版御書籍發兌 芝大神宮前 山中市兵衛 [等]" とあるもの。
C. 奥付に "静岡縣管下書肆 大森弘三郎藏版" とあるもの。
D. 奥付に "翻刻人 島根縣平民 松村榮吉" とあるもの。
E. 奥付に "飜刻人 大阪府平民 高橋平三" とあるもの。
F. 奥付に "飜刻出版人 大阪府平民 前川善兵衛" とあるもの。
G. 奥付が無く、本文最終丁最終行に "東京 和泉屋市兵衛" とあるもの。
H. 奥付が無く、巻末に "諸國發行書肆" の一覧があるもの。

D. を除いて、七章の本文一行目は全て "親ノ子ニ對シテノ間ハ何ノ為メニ設ケタルモ" までで、一行の文字数が異なる。
D. は一行の文字数は同じだが、半葉は12行。活版印刷で、明らかに字体が異なる。
今のところ、裏紙に使用された版と同じものを見ることができていない。

[2025.12.10 記]
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