雪華社の検印紙
雪華社の創業は「出版年鑑 1975」 に拠れば1957年8月8日。
「日本の出版社 1978」 でも同様だが、同書1980年版以降は創業は "1958年8月8日" となっている。
同社からは花見達二著「政界巨頭論」が1957年11月6日に発行されているので、1957年が正しいはず。
1980年代まで出版物が確認できるが、廃業の正確な時期は調べられていない。
雪華社の検印紙はいくつか種類があるが、一番多く使用されているものはリボンとイニシャル "S" がデザインされたものだろう。
庄司浅水著「本の文化史」 (1958.4.10) の
検印紙
を例に挙げる。著者の検印が少し傾いているけれど、特に問題はない。
もう一つ、川添登著「都市と文明」 (1965.2.10) の
検印紙
を例に挙げる。
貼られた方向が判るように奥付の一部と共に示した。上下が逆になっていて、どちらかが間違いである。
"S" がリボンの上側にある方が、デザインとしては安定していると思う。
"S" は上下が逆転してもほとんど形は変わらないが、普通は下の方が膨らみが少し大きい。
その点を見ても、"S" がリボンの上側にあるのが正しい向きだろう。
ほとんどは正しく貼られているのだが、下記の出版物の奥付には逆転した検印紙が貼られていた。
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菊村到著「雨に似ている」 (1959.9.20)
佐藤観次郎著「代議士編集長」 (1962.2.5)
朝日新聞学芸部編「わが小説」 (1962.7.15)
桧山義夫著「外国旅行 : これだけは知っておくこと」 (1962.11.30)
川添登著「都市と文明」 (1965.2.10)
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検印紙が上下逆に貼られた理由は明らかで、押印された著者印の向きに合わせているのだ。
幾何学模様だけの検印紙では、時に逆さに貼られたものがあるが文字が書かれた検印紙では珍しい。
著者が押印する際に検印紙の正しい上下が判らず、逆に押してしまった検印紙を貼る場合、
検印紙の上下と、著者検印の上下のどちらを優先するかとなると、著者検印が優先だろう。
一般に検印紙を貼るのは製本業者だが、担当者も困ったと思う。
これが原因ではないだろうが、雪華社の検印紙のデザインは1965年頃に雪の結晶に変更される。
上記の川添登著「都市と文明」は一年後 (1966.2.25) に普及版が出版されていて、新しい
検印紙
に使用されている。
これなら逆転しても大丈夫なはずだが、串田孫一著「日本の自然」等、中央の三つ葉模様の中央の葉が下側になっている例も多く、
やはりどちらが上なのかわからない著者もいたようだ。どちらが本来の向きだったのか、私もちょっと判断しかねるが、
検印紙のシートに上下を示す印が何もついていなかったことを表しているとも考えられる。
[2026.01.10 記]
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