「小學裁縫圖解」の著者池田孝は、群馬県の士族、号は谷蘭。扉には孝子と表記されている。
同書「中等科1」の巻頭には "池田かう子" と署名されているので、名前の読みは "こう" である。
明治28年2月1日付け官報 (3475号附録) 掲載の海軍省経理局の献納金者名簿に "群馬縣士族 池田カウ" の名があるが、経歴がわからない。
「全国職業学校案内昭和30年度版」 (日本文化通信出版局, 1954) に、"池田裁縫教習所 君津郡君津町北子安七〇七 [校]長 池田かう" とある。
明治16年に20歳としても90歳を超えるので、別人だろうか。
その他、明治20年代の「女學雜誌」の短歌欄に同名が見える。
また、「女學講義」第二回第八巻 (1898) に、池田孝子女史が企画した三陸海嘯慈善婦人會の記事がある。
この女性は「女學雜誌」481号 (1899) によれば、"仙台市の婦人" であり、
これは 「私立大日本婦人衞生會本支會々員名簿 明治36年4月現在」にある"仙台市同心町 池田かう子"と同一人物だ。
これらの人物が、「小學裁縫圖解」の著者と同一人物なのか不明である。
池田孝の他の著作は、明治17年11月19日の官報、版権書目広告欄に11月7日付の版権免許として
"小學裁縫要旨 中本拾冊 著出版池田孝 神奈川" と掲載されているが、出版はされていないようだ。
確認したのは国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている「小學裁縫圖解 高等科8」。
「小學裁縫圖解」 は中等科用と高等科用の2種が確認できる。
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/848733. 最終閲覧確認 2025.07.05]
和装本で題簽には "小學高等用書 小學裁縫圖解 池田孝著 八"、
扉には "谷蘭女史池田孝子著 高等科 全四冊 | 小學裁縫圖解 | 版權所有 東京 博文堂發兌" とある。
奥付は下記の通り。
明治一六年五月十六日版權免許 定價金三拾五錢
著者兼出版人 羣馬縣士族 池田孝 東京本郷區本郷森川町壹番地 [印]
製本并發賣人 東京府平民 博文堂 原田庄左衛門 東京本郷區本郷元町壹丁目五番地 [印]
發賣人 博文堂鋼吉 羣馬縣下上州高㟢驛田町二丁目
池田の印は "谷蘭池田" の角印、原田の印は "原田氏印" の楕円印。
奥付上部の空白部に検印紙が貼られ、割印がある。
検印紙は横長長方形、高さはおよそ30ミリ程と思われる。
モノクロ画像で図柄の詳細はよくわからないが、中央に "池田氏版權所有之證" とあるのが読み取れる。
上下左右の枠内にも漢字と思われる文字があるようだが判読できない。割印は "谷蘭池田" の角印。
扉には博文堂が版権を所有している旨の表示がある一方で、版権者として池田の名を明記した証紙が貼付された経緯はわからない。
博文堂は、この年の11月以降に "博文堂藏版證" と印字された証紙の使用を始めている。
[2025.07.07 記]
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